<社説>レーダー北大東配備 軍備増強より緊張緩和を


<社説>レーダー北大東配備 軍備増強より緊張緩和を
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 北大東村への航空自衛隊の移動式警戒管制レーダー配備計画で沖縄防衛局の幹部が27日に同村を訪れ、鬼塚三典村長らに計画決定を報告した。2025年4月にも関連施設の工事に着手する。

 レーダー設置は中国軍の活動に関するデータ収集が目的とみられる。これまで太平洋側の島しょ部には警戒管制レーダーや地上電波測定装置がなかった。部隊規模は要員30人程度が見込まれている。

 木原稔防衛相は25日の閣議後会見で「わが国周辺の警戒監視をしていく上で(北大東は)重要な位置にあり、配備の有力な候補地だと考え、現地調査などをしてきた」と強調した。

 国防を名目とした軍事要塞(ようさい)化が沖縄で急速に進んでいる。県民の新たな基地負担であるばかりか、有事の際、沖縄が危機的状況に巻き込まれる可能性を高めるものだ。

 北大東村も自衛隊配備を求めた。村議会は2021年12月、「国家の安全保障・防衛基盤充実の地理的観点から北大東村は自衛隊配備の適地である」として、自衛隊誘致の意見書を可決した。急患搬送などへの期待があった。当時の宮城光正村長も自衛隊配備を防衛相に要請した。しかし、それが村民の総意とは言い切れない。

 海洋進出を活発化させる中国の動きは注視せねばならない。だが、有事の際に標的となる可能性が高いのは軍事施設だという事実からも目をそらしてはならない。

 23年7月に開催された住民説明会に参加した村民からは、自衛隊が配備されることに対し「標的にされるのではないかと脅威を感じる意見がある」などの声が上がったというが、懸念は当然だ。

 防衛省は「現時点では移動式警戒管制レーダー配備以外の検討はない」としているが、うのみにはできない。防衛省は与那国の陸自沿岸監視隊配備でも、事前の説明にはなかった中距離多目的ミサイルの弾薬などを島に持ち込むなど、「後出し」で軍備を増強した事例があるからだ。

 玉城デニー知事は今月23日の沖縄全戦没者追悼式の平和宣言で、自衛隊の配備拡張について「悲惨な沖縄戦の記憶と相まって、沖縄県民は強い不安を抱いている」とした上で「沖縄の現状は、無念の思いを残して犠牲になられた御霊(みたま)を慰めることになっているのだろうか」と述べた。

 軍事施設は攻撃対象となり、周辺の住民が巻き込まれる可能性が高いことは歴史が証明している。沖縄戦で多くの住民が犠牲になったことを踏まえれば、知事が懸念を示すのは当然だ。

 自衛隊の南西地域への急速な配備は、沖縄戦直前に県内の島々で急激に進んだ飛行場整備や日本軍陣地の構築を想起せざるを得ない。戦争の悲劇を繰り返してはならない。平和外交を粘り強く重ね、周辺国との緊張を緩和させることを最優先にすべきである。