<社説>米兵少女誘拐暴行裁判 被害者保護の対応徹底を


<社説>米兵少女誘拐暴行裁判 被害者保護の対応徹底を
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 2023年12月に発生した米兵少女誘拐暴行事件の第2回公判が23日に開かれ、被害に遭った少女が出廷し、当時の状況などを証言した。16歳未満である自身の年齢を被告に日本語でも英語でも伝えたとし、暴行の際に「やめて」「ストップ」と拒否したことを法廷で話した。

 被告が起訴事実を否認しており、被害者の証言は立証の鍵となる。しかし、未成年の少女が7時間半も証言席で尋問を受ける状況など、訴訟の進行は被害者への配慮に欠けていたと言わざるを得ない。少女への証人尋問が被害者支援の在り方に即していたのか、検証が必要だ。

 裁判は、嘉手納基地所属の空軍兵長(25)がわいせつ誘拐、不同意性交の罪に問われている。7月の初公判で被告は「私は無罪だ」と主張した。弁護側は、被害少女との間に性的行為があったことは認めたが、少女の年齢を「18歳と認識」したと指摘するなど犯意を否定した。

 検察側の証人として出廷した少女への尋問は、被告や傍聴人との間についたてを置き、証人を遮へいする形で行われた。相手からの視線は遮られるとはいえ、ついたての裏側では被告が話を聞いている状況だ。犯罪を証明するための証言や被害に遭った気持ちを述べることの精神的な重圧は計り知れない。事件当時の恐怖が強烈によみがえる「フラッシュバック」を引き起こす懸念もある。

 性犯罪を巡る刑事裁判では、モニターを通じて別室で尋問を受ける「ビデオリンク方式」が採用されることが多い。検察側はなぜ今回ビデオリンク方式ではなく、被害者を直接法廷に立たせたのか。大いに疑問だ。

 休憩を挟んで7時間半の長時間にわたる尋問は、10代の少女にとって心身の負担が大きい。その尋問では性的行為の有無や程度を重ねて質問するやり取りが続いた。

 不同意性交罪は2023年6月の改正刑法で新設された。これまでの強姦罪や強制性交罪は「暴行や脅迫」により被害者の抵抗が「著しく困難」な場合でなければ処罰されなかったが、法改正で「同意のない性行為」が犯罪になることを明確にした。

 被害を訴えた少女に抵抗しない理由を問い続けるなどした進行は、性犯罪規定を大幅に見直した法改正の趣旨に逆行していると言えないか。少女の心的ケアに万全を期す必要がある。

 被害者の精神的な負担・不安の軽減に加え、公開が原則の裁判でも被害者のプライバシーが守られるよう、公判段階における被害者支援の対策が進められてきたはずだ。

 被害者を責めるような周囲の心ない発言は、「セカンドレイプ」と呼ばれる新たな心の傷を生じさせかねない。公判手続きが二次被害につながることがないよう、被害者保護を優先にした司法の対応を徹底すべきだ。