巨大ハブとヤンバルクイナの動画が反響 実は親子クイナだった! なぜ?いったい何があったのか 専門家に聞いた 【どローカルリポート】沖縄


巨大ハブとヤンバルクイナの動画が反響 実は親子クイナだった! なぜ?いったい何があったのか 専門家に聞いた 【どローカルリポート】沖縄 接近するハブに甲高く「キョッ」と甲高い警戒音を発するヤンバルクイナ=7月、国頭村
この記事を書いた人 Avatar photo 高辻 浩之

 約2メートルのハブと、国の天然記念物のヤンバルクイナ複数羽が対峙(たいじ)する様子を捉えた琉球新報の記事と動画が反響を呼んでいる。琉球新報のウェブサイトやYouTubeで視聴できる動画は7月13日に公開。一カ月余りで延べ15万回再生に達している。動画を見た専門家は「クイナの子育てを捉えた貴重な映像」と指摘する。

ヤンバルクイナの親子だった

ハブと対峙(たいじ)するヤンバルクイナの幼鳥(左)と親鳥=7月、国頭村

 ヤンバルクイナ研究の第一人者でもある山階鳥類研究所(千葉県)の尾崎清明副所長は「今回の映像は、自然界でのヤンバルクイナと、天敵であるハブとの関係性を見る上で、非常に貴重な映像といえる」と説明「キョッ、キョッ」と甲高い鳴き声を上げて、ハブをけん制する様子について「子別れする前の幼鳥が親鳥から危険回避のすべを学んでいる姿がみられる」と見解を示した。

ヤンバルクイナ研究の第一人者に聞いた

 尾崎氏は1980年代にヤンバルクイナの発見、新種登録に携わったメンバーの一人で、現在も沖縄本島北部に通い、県内のNPOなどと協力し、生態研究や保護活動に取り組んでいる。

ヤンバルクイナの新種登録メンバーの山階鳥類研究所の尾崎清明副所長=7月、国頭村

 今回の映像に記録されたヤンバルクイナは全5羽。雄雌のつがい一組と、その子とみられる生後2~3カ月の幼鳥、ほかに成鳥2羽がハブの周囲で確認された。クイナの縄張りに侵入した大きなハブにクイナは「キョッ」と警戒音を発し、複数で周回りを囲み圧力をかけて、けん制する様子が撮影されている。行く手を遮られたハブは、村道を右往左往し、結局、元来たやぶへと退散した。

 この時、警戒音を発したのは成鳥のみとみられる。映像を確認した尾崎氏は「ハブの危険性を親鳥が幼鳥に指南し、同時に警戒音を学ばせていたと考えられる」と説明する。

近づくハブに警戒音を発するヤンバルクイナの親鳥(奥)と幼鳥=7月、国頭村

ライバルらも駆け付け、共闘態勢に

複数羽でハブを囲み、けん制するヤンバルクイナ=7月、国頭村

 ヤンバルクイナの縄張りは、四方約400メートルとされていて、一つの縄張りにつがい一組と、親離れ前の幼鳥が生息する。今回、警戒音を聞き、他の縄張りのクイナも駆け付けたとみられ、自然界ではライバル関係にある別グループのクイナ同士が、共通の天敵ハブが現れたことで、縄張りを越えた共闘態勢で向き合う習性もうかがえるという。

生態系を守るために

尾崎清明氏(右から3人目)とNPOどうぶつたちの病院沖縄の長嶺隆理事長(右端)とメンバー=7月、国頭村

 沖縄本島北部だけに分布するヤンバルクイナの個体数は推定1500羽ほど。以前に比べ増加したが、回復したとはいえないという。山階鳥類研究所やNPOどうぶつたちの病院沖縄では、ヤンバルクイナの人工繁殖等を通し、絶滅回避の取り組みを行っている。今回の映像に記録された親鳥の警戒音などを生育施設で活用し、クイナのひなや幼鳥が自然界における危険回避能力が備わるよう役立てたいとしている。

 (高辻浩之)

甲高い警戒音を発するヤンバルクイナ=7月、国頭村
計5羽のヤンバルクイナ=7月、国頭村
くちばしがまだ黒っぽいヤンバルクイナの幼鳥=7月、国頭村