<社説>’24衆院選 社会保障 給付と負担の在り方示せ


<社説>’24衆院選 社会保障 給付と負担の在り方示せ
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 総務省が公表した人口推計によると、2024年9月時点の65歳以上の高齢者は前年比2万人増の3625万人と過去最多を更新した。総人口に占める割合も29.3%と過去最高となった。一方、人口動態統計によると23年の出生数は過去最少の72万7277人、合計特殊出生率も1.20と過去最低を更新した。

 少子高齢化が急速に進む中、高齢者を支える現役世代、若年層の負担は増している。医療や年金、介護、子育て支援といった社会保障制度を持続可能にするための議論は待ったなしと言える。

 岸田文雄政権は、9月に閣議決定した「高齢社会対策大綱」改定で、75歳以上(後期高齢者)で医療費窓口負担が3割となる人の対象を拡大するよう検討を加速させるとした。年齢を問わず支払い能力に応じ支え合う「全世代型社会保障」の構築を図るという。しかし高齢者数がほぼピークとなる40年に向け、医療費が伸び続けることは避けられない。

 また、岸田政権は児童手当拡充を柱とする少子化対策関連法を成立させ、財源捻出のため公的医療保険料に上乗せする「子ども・子育て支援金」を創設する。社会保障の歳出削減の範囲内で制度を構築するとし「実質的な負担を生じさせない」と説明している。ただ与野党から「分かりにくい」との指摘もあった。

 今回の衆院選では、政府が進める社会保障改革について国民の評価が下されると言えるだろう。

 各党の公約を見ると、自民は「全世代型社会保障」を強調、働き方に中立な社会保障制度を訴える。公明は高齢者が働きやすい環境を整備するため在職老齢年金制度の見直しを打ち出す。

 立民は保険料の上限を見直し、富裕層に応分の負担を求める方針を明記した。維新は75歳以上の窓口負担を3割にし、現役世代の保険料軽減を進めると強調。共産は70歳以上の医療費窓口負担を一律1割にすると訴える。国民民主は支払い能力に応じた医療費窓口負担とし、後期高齢者は原則2割とする。

 れいわは社会保険料の引き下げ、社民は後期高齢者の医療費負担を1割に戻す、参政は国民負担率の上限35%など、それぞれ訴えている。

 少子高齢化社会の到来は以前から指摘されていたが、社会保障費の在り方を巡る議論は、これまでの国政選挙では低調だったと言えよう。与党の自民・公明は高齢者の負担増に触れていないが、国民に負担増を求めるならば、各党は、その意義をより明確にして国民の信を問うべきだろう。また、世代間の対立を生み出すことがないよう、税金の使途や分配についてもさらに議論を深めるべきだ。

 少子高齢化が現実となった今、財源も含め給付と負担の在り方、国民が安心できる社会保障の姿を各党が提示することが問われている。