衆院選区割り 小手先の対応でいいのか


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 小手先の対応という印象をどうしても拭えない。

 衆院選挙区画定審議会が小選挙区定数の「0増5減」を軸とする区割り改定案を首相に勧告した。1票の格差は最大1・998倍と辛うじて2倍を切ったが、2~3年先に再び2倍を超えるのは確実だ。数年おきに改定を繰り返す不毛な作業を今後も繰り返すつもりなのか。
 根本的な格差是正を図るには、今の選挙制度にメスを入れる必要があろう。抜本的な改革を国会は急ぐべきだ。
 当初、5月下旬とみられていた区割り改定案が2カ月も早まったのは、最近相次いだ1票の格差の違憲判決に背中を押された側面がある。格差が2倍を超えるのが当たり前だった従来の選挙も「違憲状態」と指摘されていた。それが「違憲」と断じられるに至り、なおかつ選挙無効との判決まで出るに至っては、一刻の猶予もならない。そう考えるのも当然だ。
 ただ、弥縫(びほう)策の感は否めない。今回の改定案で、今の選挙制度の施行以来初めて最大格差が2倍を切ったが、とはいえ1・9倍を超える選挙区は23を数え、1・99倍を超えるものさえ三つもある。
 次の衆院選の前にまた2倍を超えかねず、辛うじて乗り切ったとしても、次の総選挙の前には再び区割りを変える必要が出てくる。今の制度は限界のように見える。
 今回、焦点は鳥取県の二つの小選挙区を維持するか否かだった。
 参院は3年おきに半数の改選を繰り返すから、必然的に1県で2人以上の参院議員がいる。鳥取もそうだ。同県の衆院の小選挙区を一つにした場合、参院議員の方が多い逆転現象が生じてしまう。
 逆転を避けるため2小選挙区を維持しようとすれば、同県の人口約60万人の半数、30万人が一つの基準になる。1票の格差を2倍以下にするなら今回の案がぎりぎりだ。過疎に悩む鳥取の現状を考え、ゆとりをもって2倍を切るようにするなら、全国の小選挙区の数をもっと増やさないといけない。
 国会の定数削減が論議される現在、議員増はもってのほかだ。すると参院の定数や衆院の比例・小選挙区定数の変更、ひいては中選挙区復活が検討対象となろう。ただし検討を長引かせる怠慢は許されない。国会はあらゆる案を、タブーを恐れずに、しかも速やかに議論し、成案を得てもらいたい。