建白書から1年 沖縄の結集軸に立ち返ろう


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 1879年の廃藩置県以来、沖縄は、自らの手で自らの運命を決められない近現代史を歩んできた。

 民意に反し、米軍普天間飛行場の県内移設を強いるこの国の為政者とそれに屈した県知事の下、沖縄社会はかつてないほど、犠牲と差別の押し付けの歴史を断ち切る意思をみなぎらせている。
 私たちがつかみ取るべき沖縄の未来像とそれに向けた判断基準を明確に打ち出したのが、米軍普天間飛行場の県内移設の断念と閉鎖・撤去、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備撤回を求める「建白書」だ。
 日本政府による基地押し付けを拒否し、この国の民主主義の在り方を鋭く問い直した歴史的文書が、安倍晋三首相らに手渡されてから1年を迎えた。
 「建白書」は、党派を超えた「オール沖縄」の結集軸である。その普遍的価値を見つめ直したい。
 「建白書」には、県議会議長、県内の41全市町村長と議会議長、各種団体の長の署名・押印がなされている。総勢約150人が上京した総行動によって閣僚らに沖縄の不退転の決意を直接伝え、国内外に発信したのは記憶に新しい。
 アカデミー賞受賞監督のオリバー・ストーン氏ら欧米の著名な識者が辺野古移設中止を求めた声明も、「建白書」に言及している。
 この1年の間、普天間飛行場の名護市辺野古への移設をごり押しする安倍政権のどう喝にさらされ、自民党県連と所属国会議員らが建白書の理念実現を求める超党派の取り組みから離脱した。
 しかし、19日の名護市長選で移設に断固反対する稲嶺進氏が大差で再選を果たし、政府に屈さず、沖縄に新たな米軍基地を新設することを拒む強固な民意が示された。
 名護市長選を受けて、本紙が実施した市町村長アンケートでは、約6割に当たる24人が名護市の民意を反映した移設断念を求めている。民意尊重を求める首長の声は「建白書」の延長線上にある。
 移設推進と答えた2人や回答しなかった首長は、自ら署名した「建白書」の意義をどうとらえているのか、説明責任を果たしてもらいたい。
 安倍政権による差別的な基地押し付けに負けず、子や孫の世代に平和な島を残すためにも、「自己決定権」を取り戻す決意を打ち固めたい。「建白書」の理念に立ち返り、沖縄の尊厳を守ろう。それが歴史を変える原動力になる。