安心して子を宿し、産んで、育てて、そしてまた働きがいのある職場へ戻る。女性のそんな働き方が実現できるよう大きな転機となることを期待したい。
最高裁は、女性が妊娠後に降格されたのは男女雇用機会均等法が禁じる不利益処分に当たるとして、違法との初判断を下した。
同時に例外基準も示した。女性が自由意思で降格に同意した場合と、業務上の必要性など特殊事情が生じるときに限定した。
最高裁判決は、企業側にマタニティーハラスメント(マタハラ)防止の意識を強くさせ、女性が活躍する社会づくりを後押しするものと評価できる。
これまでマタハラ被害を受けながら泣き寝入りせざるを得なかった女性たちが、声を上げやすくなるはずだ。
女性は第2子を妊娠し、産休と育休を取得する前に軽い業務への転換を求めたところ、副主任を外され、管理職でなくなった。副主任手当を失う経済的損失もあろうが、何より理不尽な扱いに傷つき、憤り、悔しさを募らせたはずだ。
しかし、妊娠・出産を機に退職を迫られたり、雇い止めになったりしたという話は枚挙にいとまがない。昨年の連合の調査では、在職中の4人に1人がマタハラ被害を経験したと回答した。
最高裁判決は違法かどうかの線引きを初めて示す一方で、降格の同意の有無を裏付けるプロセスや、どういう場合が特殊事情に当たるのかには触れていない。
通常は個別の司法判断を重ね、防止のルールが出来上がるのだろうが、それを待ってはマタハラ被害を増やすだけだ。行政は早急にガイドラインを作り、無用な混乱や被害を防ぐべきだ。
安倍政権は成長戦略の中に「女性の活用」を掲げ、「女性が輝く社会」を実現するという。行政は少子化対策に取り組みながら、その一方で妊娠・出産を理由に職場を追われる女性がいるという矛盾を放置してはならない。
これは女性だけの問題ではない。いったん親の介護が始まれば、男性も業務軽減を職場に求めざるを得ない状況が起こる。
少子高齢化で労働力人口が減る中、女性が産み育てながら働ける社会を保障しなければならない。それを可能にする社会が、働く人にも企業にも利益になるはずだ。