<社説>県環境部意見 無理な計画は断念すべきだ


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 名護市辺野古の基地建設をめぐり環境面への疑問が次から次へと出ている。現行計画に無理があるからにほかならない。

 米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設計画で、沖縄防衛局が提出した4件の工法変更申請に対し、県環境部が過去の防衛局側の説明との整合性に疑問を示す意見をまとめた。
 環境面の影響が懸念されるシュワブ内の美謝川の水路変更申請で環境部は、暗渠(あんきょ)(地下水路)が当初計画の4倍に延びたことについて「生物への影響が大きい」と指摘した。
 計画変更は、名護市との協議を避ける防衛局側の狙いがあるとみられるが、環境部は「(暗渠は最小限にするとしていた)環境影響評価書の比較検討結果との整合に疑問がある。可能な限り開水路とする検討が行われたか不明」と意見を付した。もっともな指摘だ。
 埋め立て土砂のダンプカー搬送案には「複数案が検討されたのか不明」と疑問視した。仮設道路の新設には、動植物への影響に関する防衛局の予測に対し「妥当性が判断できない」と意見を付した。
 辺野古埋め立ての環境アセス手続きでは、政府の当初の説明になかった重大な事実が後に明らかになる「後出し」が相次ぐ。オスプレイ配備や軍港機能整備が最たる例だ。最近も、100メートル余の仮設桟橋を本体工事前に建設する計画が発覚したが、評価書や埋め立て申請には記載されていない。
 透明性や民主的な手順をあまりに欠いていると言わざるを得ない。百歩譲っても、環境アセスをやり直すのが筋であり、できないと言うなら現行計画を諦めるべきだ。
 県は2012年の環境アセス評価書への知事意見で「環境保全は不可能」と指摘していた。それが埋め立て申請に対する昨年11月の意見では「懸念は払拭(ふっしょく)できない」と表現を変えている。今回は疑問点を指摘するなどにとどめた。
 もし昨年末に知事が埋め立てを承認したから今回は遠慮した、というのなら、それは間違いだ。環境負荷が高まりかねない内容に対して、専門的な見地から厳正に対処すべきだ。
 工法の変更申請手続きは今後、防衛局への再質問を経て今月下旬以降に県知事による承認の可否判断の環境が整う。言わずもがなだが、16日の県知事選で選出される次の4年間の県政リーダーに、その判断を委ねるべきである。