<社説>仮設桟橋工事 知事選まで着手許されない


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 県民が知らぬ間にひそかに工事を進めようというのか。名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブの砂浜で、辺野古崎付近の木々の伐採が始まった。周辺は米軍普天間飛行場移設に伴う新基地建設に向けた海底ボーリング調査などに使用する仮設桟橋が近く設置される予定となっている。木の伐採は桟橋設置に向けた整地作業とみられる。

 沖縄防衛局は「作業が安全にできなくなる可能性があるので答えられない」と述べ、工事着工の有無も工法、設置場所すらも明らかにしていない。税金が投入される事業であるにもかかわらず、これほどまで秘密裏に進めることが果たして許されるのだろうか。
 仮設桟橋は埋め立て本体工事に向けた資材の運搬や海底ボーリング調査でも使用される。長さは陸上部約30メートル、海上部約70メートルの計約100メートルにも及び、砕石を海底に積み上げ、鋼材も使用する。事実上の埋め立て工事と位置付けられる本格的な海上工事の準備だ。
 大規模な工事にもかかわらず、環境影響評価書や埋め立て承認申請書には仮設桟橋の設置は記載されていない。防衛局が7月に県へ提出した本体工事に関する岩礁破砕申請で初めて仮設桟橋の図面が記載された。しかし防衛局は警備上の理由から県に公表しないよう依頼している。県も非公表を受け入れたため、桟橋に関する部分が黒塗りにされて公表された。防衛局の秘密主義を県が追認している。県民よりも国の側に立って行政を進めているとしか思えない。
 移設作業の環境問題に関する県の姿勢が次々と変節していることにも驚く。移設予定地に流れる美謝川の水路切り替えの地下水路も当初の評価書では240メートルだった。知事意見では「自然豊かな多様性の創出が十分できるとは言い難い」と指摘し、再検討を求めていた。
 しかし今回の変更申請で防衛局は1022メートルまで延ばしている。県は当然厳しく指摘すべきだが、防衛局に送付した環境部の意見は「(地下水路を)可能な限り開水路とする検討が行われたか不明」との指摘にとどまった。整合性のない県の姿勢が防衛局の工事加速という「暴走」に拍車を掛けているのではないか。
 県知事選の最大の争点は辺野古移設の是非だ。審判が下るまで全ての工事に手を付けることは許されない。防衛局は作業を直ちに中止すべきだ。