<社説>子育て新制度 問題に向き合う好機だ


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 「子ども・子育て支援新制度」が来年度、施行されるのに伴い、県内で公立幼稚園児の午後の居場所がなくなる可能性が生じている。新制度施行により、幼稚園児の放課後児童クラブ(学童)利用が原則としてできなくなるからだ。

 子育てしやすくするのが目的の新制度で子育てがしにくくなるのは、皮肉としか言いようがない。
 事は子どもの居場所に関わる。緊急性は極めて高い。まずは行き場のない子が1人も出ないよう、市町村は対応に全力を挙げてほしい。
 現在でも学童は小学生対象というのが全国基準だ。だが沖縄では幼稚園児を受け入れる学童も特例で補助の対象としていた経緯もある。それが新制度で基準が厳格化し、受け入れが難しくなる。
 背景には米国統治下で幼稚園整備が進んだ半面、保育所の整備が大きく立ち遅れたという特殊事情がある。大多数が5歳になると幼稚園に通うから、沖縄の保育所では4歳までを対象としていた時期もあり、今も5歳児枠は少ない。
 保育所と違い、幼稚園は午後の早い時間に降園となる。すると保育所に預ける4歳までは大丈夫だが、5歳児は午後を一人で過ごすことになる。沖縄特有の「5歳児保育問題」だ。本土の共働き家庭などでは小学校入学前まで保育所に通うのが主流だから、そんな問題は生じない。沖縄では学童や認可外保育園が自助努力で5歳児の午後の受け皿となってきた。
 現代は共働きやひとり親の家庭が多く、保育の需要は高まっている。「5歳児保育問題」を放置していいはずがない。各市町村は、幼稚園での降園後の預かり保育を拡充する方向が主流のようだ。緊急避難的な措置としてはうなずける。
 一方で、現行の預かり保育では、当面の「保護」が主になり、保育の質の点で課題もある。保育施設が5歳児も受け入れ対象とし、午前も午後も一貫した質の保育を保障するのが本来の在り方だろう。そのためには保育施設と人員の充実が欠かせない。行政の対応が求められる。
 これまで自治体が学童などの自助努力に頼っていた印象は否めない。新制度で各市町村は待機児童解消などに向けた具体的な計画を求められる。子育て支援に本格的に向き合う好機だ。これを機に地域の子育てニーズを徹底して調べ、実需に応じた子育て支援計画を立て、実行してほしい。