<南風>沖縄VMAT初出動


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 5日に台風13号が直撃した直後の宮古島に沖縄VMAT(災害派遣「獣医療」チーム)が初出動した。13号は今年沖縄に直撃した中では最大。大きく報道されたため記憶に新しいと思う。本島は直撃を避けたが八重山を直撃。沖縄VMATは全てが初体験だったが、その分、得られた収穫も大きかった。

 一番の問題は「動物」ではなく「人」である。まずは我々VMAT側の人の確保も実際は難しいことがよく分かった。災害は急に起きるが、皆、自分の仕事を急には休めない。しかも多くは獣医師や看護師で動物の病気も待ってくれない。

 また動物自らが避難するのではなく、飼い主の意向が強く反映される。避難所を運営する市役所の人、災害現場に急行する消防の人、動物行政に携わっている人、ボランティア活動にいそしんでいる人もいる。宮古島にはペット専門の動物病院は一つしかないが、人口5万5千人の沖縄第3の島で、有事になればそれで十分ではないのだ。

 ただ、これらの人々が、手を取り合い、点と点を線でつなげれば、それはとても大きな力になる。しかしこれが本当に難しい。皆、それぞれの正義があり、こうあるべきと思って島民のために仕事をされている。そこにはそれぞれの主張がある。それを互いが許容できるかどうか。

 防災士講習で、自助、共助、公助という概念がある。つまり有事には互いに助け合うことを求められる。これを、いかに平時にできるかが一番のポイント。しかし、ここで一番の障壁が各自の主張である。ほんの少しだけ許容し互いに認め合ってみたらどうか。やはり信頼関係の構築が一番だ。そのためにはオンラインの今の時代にも、顔を合わせるという、ごくシンプルなことが一番手っ取り早い。そう感じた今回の出動だった。

(周本剛大、琉球動物医療センター院長 沖縄VMAT隊長)