<南風>バイリンガル俳句


社会
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 俳句は鎌倉時代・室町時代の滑稽な言葉遊びである俳諧連歌に端を発し、江戸時代前期の松尾芭蕉によって文学に高められた。明治時代の松岡子規の俳句革新によって、俳諧連歌から独立した。子規は自我の確立と近代リアリズムの思潮を取り入れ、五七五の韻律を季語による世界最短詩形の「俳句」が確立した。日本の伝統の詩形として現代まで続いている。

 日本だけの詩形と思う日本人が大半だと言われているが、実は俳句は百年以上前から欧米を中心に世界に広まっており、俳句人口は日本より海外の方が多く、評価も高い。

 2011年にスウェーデンの詩人トーマス・トランストロンメルがスウェーデン語で五七五の韻律を踏む俳句形式の詩を発表して、その年のノーベル文学賞を受賞したのは驚きであり、記憶に新しい。

 私は英語指導者の端くれとして、海外にも沖縄の文化風土を発信しようと、2004年から日英両語のバイリンガル俳句を詠み発表している。12年に沖縄初の英和対訳のバイリンガル俳句集「白光・White Sun Rays」を出版した。タイトルの「白光」は次の句から採った。

 「雲の背に白光のあり夏の蝶(ちょう)」(White Sun Rays Shine/Upon the Back of Clouds―/a Summer Butterfly…)

 この句集は俳人の坪内稔典氏が読売新聞で紹介してくれた。また、私の所属する月刊俳誌「春耕」でも取り上げられ好評を得た。おかげで書店に配本した500冊は1年で完売した。

 日本語の俳句に加え、日英両語のバイリンガル俳句は那覇文芸協会(伊佐節子会長)出版の年刊総合文芸誌「那覇文芸」で毎号発表している。これからもライフワークの一つとしてバイリンガル俳句を作り続けていこうと思っている。

(澤田清、澤田英語学院会長 国連英検特A級)