<南風>捨てられない物


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 この連休、家の大掃除をした。溜(た)め込んだゴミを捨て、スッキリした。あまり深く考え込まない性格からか、物を捨てるのは得意だが、今回、悩みに悩んで捨てられない物が二つあった。

 一つ目は、6年前に私の体内から取り出された胆石。10年近く、食べ過ぎによる胃の痛みだとやり過ごしてきた、みぞおちの激痛の原因となっていた胆石。憎き存在かと思いきや、手術で取り出された二十数粒の石は、あまりに黒々と輝いていて、それを目にした時、やはり私の腹の中はまっ黒なんだと、ニヤリ。愛着が湧いてしまった。そして、大切にガラスの瓶に保管することに相成りました。

 捨てられなかった物、二つ目は、妊娠中に胎児だった息子を写したエコー写真。インスタント写真のため、アルバムなどに貼り保存する必要があったのだが、知識のなかった私は、お腹(なか)の中で成長する息子があまりに愛おしく、リビングに飾っていたところ、色褪(あ)せ、ほとんど見えなくなってしまった。もはや何も映っていないそれは、ただのペラペラの紙。でも、そこには、息子の命を授かった奇跡の原点があるから捨てられないのだった。

 こう書いてみると、捨てられない理由がクリアになり気持ちがスッとするのだが、正直、胆石については自分でも謎だ。これからも手元に置いておくため無理やり考えた理由は、自分の腹黒さを認め、少しでも清らかな心を持とうという戒め、そして健康のありがたさを日々、忘れないようにするため…ということにしておこう。

 きょう一日、特に何を成し遂げたわけでもないが、お腹の中にいた頃、最初米粒みたいだった息子が、家族みんなが、元気に過ごせただけで、すごいなーと、掃除を終えてしみじみ思ったのだった。

 たわいもない話にお付き合いいただき、謝謝。
(平良いずみ、沖縄テレビアナウンサー)