<南風>もったいない


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 日本人の子どもの6人に1人が貧困状態。この衝撃的な事実を突きつけられたのは、2014年暮れのあるドキュメンタリー番組だった。現場の克明なルポを通して見えてきたのは、ひとり親世帯、それも母子家庭の困窮状況だ。

 貧困家庭では食べることさえ事欠く一方で、我が国では年間約632万トンもの食べ物が廃棄される。いわゆる「食品ロス」だ。世界で行われている途上国などへの食糧援助の倍の量だという。生産現場、流通過程、小売り販売の在庫管理が原因で食べ物が食卓にのぼらずに捨てられる一方、食品ロスの約半数は外食産業や家庭での食べ残し、未使用のままの廃棄という。

 捨てられる食べ物と足りない食べ物の問題を解決する「フードバンク」と呼ばれる動きが全国で広がりを見せる中、ここ沖縄でも、食品ロスをなくすことを目的に活動する非営利団体がある。企業や農家、個人から無償で提供された食料を、月に1度2週間分、児童養護施設や障がい者支援施設、貧困の個人世帯を含む計80カ所に届けている。本学(OIST)からも先頃有志による食料の寄付が行われた。

 最も好評なのはお米で、次にレトルトやインスタント食品というが、いずれも需要に追いついていない。団体が設立されたのは約10年前。代表の女性が食品ロスをとりあげたテレビ番組を見て、「もったいない」と思ったのがきっかけだ。助成金が財源の僅(わず)かな運営資金をもとに、専業主婦を中心とする15名のボランティアが日々汗をかく。今後は離島も含めた県全域での活動を目指している。

 全国のフードバンク活動実施団体が扱う食料は、食品ロスのまだ1%にも満たない。十分に食べられる食料を必要とする人に届ける、「もったいない」を「ありがとう」に変える運動が、ここ沖縄でも根付いていってほしい。
(名取薫、沖縄科学技術大学院大学広報メディアセクションリーダー)