<南風>地域で実る園芸科


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 久米島高校の園芸科は、各学年1クラスの少人数だが、学習内容は多様だ。草花や野菜の育て方、フラワーアレンジメントや室内装飾、ニワトリの育て方、捌(さば)き方。バイオテクノロジーを使った蘭の増殖や希少品種カワラナデシコの保全など、高難度なものもある。また、久米島マラソンのゴールを彩るたくさんの花鉢や、楽天ゴールデンイーグルスのキャンプ時に選手たちを空港で出迎える巨大な花文字も、園芸科の生徒たちの手によるものだ。

 なかでも地域の人たちが一番楽しみにしているのが、年に2回の即売会。今年第1回が、先週金曜日に行われた。開場前から順番待ちの列ができ、人気の卵や野菜の苗は、ほぼ完売。多くの方が生徒と会話を交わしながら、買い物を楽しんでいた。

 いろいろな技術が身につく園芸科だが、それ以上にいいなと思うのは、地域社会と直接つながりを持てることだ。即売会で自分の作ったものが売れたり、町の行事を盛り上げるのに一役買ったりすることで、誇らしい気持ちが生まれるだろう。そうやって地域の大人に認められる経験を通して、生徒たちは社会の中に居場所を見つけ、大人になる準備をしていく。

 いま学校現場では、変化の激しい社会において必要な力を身につけるため、アクティブラーニングや課題解決型授業の必要性が説かれている。でも園芸科にとって、それは難しいお題目ではなく、いたって身近なこと。どうすれば野菜が売れて採算が取れるか、希少品種の保護・普及のためにはどうしたらよいか、実社会の中で試行錯誤できる。

 先日、ピーマンがあまりにおいしそうだったので、生でも大丈夫かというつもりで「このままでも食べられる?」と生徒にきいたら、「洗ってから」との答え。聞き方が悪かったのか…。
(山城ゆい、久米島高校魅力化事業嘱託員)