<南風>島の力


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県地域離島課主管の沖縄離島体験交流促進事業が始まりました。今年度は沖縄本島の5年生3721人が22離島25地域へ行き、民宿や民泊をしながら、自然・文化・歴史・農漁業などの体験をします。

 たった3日間されど3日間です。過去7年間のアンケート調査で驚くほどに児童が変わることがわかりました。「好き嫌いが減った、食べ物を残さなくなった、家のお手伝いをするようになった、積極的になった、自信が出た、コミュニケーション力がついた、自分の地域への関心が高まった」などなど。

 なぜそんなことが起こるのでしょうか。先週末に行った合宿研修から垣間見えたことがあります。各離島の受け入れ組織の代表やコーディネーターが事業運営スタッフと共に講義やワークショップを通して、安心安全で質の高い受け入れをするための学び合いをしました。各離島から集合した参加者は、組織の長から新人まで年齢も性別も経験も島の規模も様々でした。口の悪さも素朴さもそのまんまに、対等な関係で本音の発言と質問ができる温かい空気に満ちていました。気づきを得て泣き出す人が出るほどに心を許せる関係になっていました。これこそ離島の力かもしれません。

 数年前、民泊中にお風呂場のガラスドアが倒れ児童が40針縫うという事故がありました。幸いにも後遺症もなく事なきを得たのですが、責任をとって今後の受け入れはしないと謝った民家さんに児童のお父さんが「子どもたちのためにやめないでください」とおっしゃいました。また、同事業で5年前に久米島へ派遣された子が今年4月久米島高校へ入学したそうです。

 来年は、初年度事業に参加した163人が大学生になります。お世話になった島への里帰りが始まりそうです。離島力が開花するのはこれからです。
(開(比嘉)梨香、カルティベイト社長 沖縄海邦銀行社外取締役 元沖縄県教育委員長)