<南風>良さを引き出す生徒指導


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 大学卒業後に赴任したのは地元の学校だった。当時、県内の中学校は生徒間、対教師暴力、喫煙、いじめなどで荒れている時代。赴任して感じたのは生徒にあり余るエネルギーだった。

 年齢も近いので、共にスポーツで汗を流しながら、何か一つでも自慢できるものを見付けてあげられないかと模索した。子どもたちに善悪の判断を身に付けさせ、いいところを最大限に伸ばしてあげることを念頭に置き、授業でもスポーツでも一緒に汗をかくことを大切にした。

 地元の学校ではバレーボールで優勝、駅伝でも上位成績を収めるようになり、そうなると生徒たちは次第に自信が付いていった。

 次は小規模校から沖縄市内の大規模校へ転勤となったが、生徒指導が多く、特に暴走族とのつながりのある子もいて、校内に暴走車が乗り付けることもあった。大学での空手の経験を基に、けじめをつけること、部活に集中させ、居場所や自信を持たせることを重視した。

 問題を持っている生徒への対応では、こまめな家庭訪問、青少年センターの方々との夜間街頭指導などを徹底した。その時に感じたのは、学校職員のチームワークの大切さだ。先生たちが何をしようとしているのか、子どもたちは敏感に感じ取る。職場に笑いがあり、先生同士の仲がいい学校は何か問題を抱えていることがあっても、いずれは必ず落ち着いていくものだ。

 中学校教諭として21年間勤め、そのうち16年間は生徒指導主任に就いた。私が空手を習っていることもあり、力ずくで生徒を抑えつけていると思われていた。ただ、生徒指導というのはそうではないと思う。社会のルールを教えるために、厳しい指導もするけれど、親身になって子どもたちと関わり、生徒の良さを引き出すことで希望につなげたい。
(田村正人 県空手道連盟強化委員長、県立前原高校教諭)