<南風>サザン愛


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 コラムのテーマに困ったら書いてみたいと思っていたことを書こう。

 私はサザンオールスターズの大ファンである。今年デビュー40周年を迎えるサザンは、私とほぼ同い年。初めてサザンを見たのは、ランニングシャツとパンツ姿で汗だくになって「ラララー」と歌う姿。日本語のようだが、歌詞がよく聴き取れず、幼い私にはまったく意味が分からなかった。それから数年後、本格的に楽曲を聴くようになったきっかけは、友人がプレゼントしてくれたカセットテープ。「マイナス100度の太陽みたいに」なんて歌詞をどうやって思いついたのだろう。テープが擦り切れるほど聴きまくった。2003年、沖縄で開催された野外ライヴ。大粒の雨が降る中で聴いた「今夜も冷たい雨が降る」という歌詞に全身鳥肌が立った。

 2010年、桑田さんが大病を患った。あの歌声をもう聴けないのかと、大変ショックを受けた。しかし、約1年半後には復帰。あまりにも早い活動再開に心配にもなった。東日本大震災に遭った年だった。震災で心身ともに弱っていた当時の私を勇気づけてくれたのは、少し痩せた身体でステージに立つ桑田さんだった。どんなに情けない姿でも、自分が戻ってくることで誰かを元気づけることができればという想(おも)いで、あの場に立っていたことを後から知った。

 それから6年後。復帰ライヴと同じ楽曲がまるで違って聴こえた。何とも言えぬ力強さと生命力。休養前と変わらぬパワフルな姿。6年前とは違う意味で泣けた。ステージバック席から背中越しに見えたのは、希望だった。私もがんばろう、単純にそう思えた。「いまがどんなにやるせなくても明日は今日より素晴らしい」と届けてくれた桑田さんに感謝。

 いくらでも「サザン愛」を語ることができそうだが、今回はこの辺で。
(吉川麻衣子、沖縄大学准教授 臨床心理士)