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立体的に描いた「上里グスク」の鳥瞰図がお披露目 「久志の若按司」の居城 名護市


立体的に描いた「上里グスク」の鳥瞰図がお披露目 「久志の若按司」の居城 名護市 久志集落や上里グスクの様子を描いた鳥瞰図
この記事を書いた人 Avatar photo 池田 哲平

 【名護】組踊の演目でも広く知られた「久志の若按司」の居城と伝わる名護市久志の「上里グスク(久志グスク)」を立体的に描いた鳥瞰(ちょうかん)図が、初めて製作された。久志区の依頼を受け、グスクが存在した当時の様子や集落の姿を描いたのは空間デザイナーの池上典さん(80)=東京都。9日に久志公民館で開かれた完成セレモニーで、池上さんは「この絵は完成したものではない。絵を元に研究が進んで、区民の生涯学習として、絵を完成させてほしい」と話した。

空間デザイナーの池上典さん(前列中央)が描いた上里グスクの鳥瞰図の完成記念セレモニーを開いた久志区民ら=9日、久志公民館

 上里グスクは久志集落北側の丘陵地にある。久志若按司の居城という伝承が古くから残っているほか、中国産の青磁が採集されている。集落から近い場所には若按司の墓も残っている。

 沖縄考古学会顧問で、グスク研究所主宰の當眞嗣一さんらによる調査があり、敵の侵入を防ぐためとみられる「腰曲輪」や「切岸」「土塁」などの防御システムが確認された。

 池上さんは當眞さんらとともに現地を確認し、約4カ月かけて絵の製作を進めてきた。研究家による平面図、戦後以降の米軍の等高線入り地図や写真を参考にした。だが、いずれの資料も大まかな形状や高低差をわずかに読み取れる範囲だった。そのため当時の様子を想定、推測して鳥瞰図を描いたという。

上里グスクを拡大した鳥瞰図

 絵は海側から集落、グスク、辺野古岳、久志岳を望む広角な構図と、丘陵に沿って築かれたグスクを拡大した構図の2枚。住宅や河川、田畑などが当時の様子をしのばせる。池上さんは「全体像が正しいとは言えない。区民が絵に疑問を持って調査、検証してもらうことが大事だ」と今後の調査を期待した。

 久志区の安里秋男区長代行は「絵から躍動感を感じる。久志区として大切にしていきたい」と話した。鳥瞰図は名護博物館の企画展「見えてきた!名護・やんばるの『土より成るグスク』」で公開、展示される。

 (池田哲平)