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ジェンダー格差 是正遠く 副大臣・政務官 女性ゼロ 釈明 自民 適任少なく、育てず マネル


ジェンダー格差 是正遠く 副大臣・政務官 女性ゼロ 釈明 自民 適任少なく、育てず マネル 政務官会合であいさつする岸田首相=15日午後、首相官邸
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

政務官会合であいさつする岸田首相=15日午後、首相官邸
 15日に発表された第2次岸田再改造内閣の副大臣と政務官のリストに女性は一人もいなかった。過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を起用しながら、将来の閣僚を養成する重要ポストを全て男性に与えたちぐはぐな対応に、識者は「政治のジェンダー格差を本気で是正する意思は感じられない」と厳しく批判する。
  (3面に関連)
 岸田政権は、2021年10月の第1次内閣発足時、女性の副大臣1人、政務官4人でスタートした。その後も順調に女性登用が進んだように見えたが、再改造内閣で突然ゼロになった。
 「女性に適任者がいなかったということだ」。自民党の派閥幹部が釈明する。一本釣りを含め首相の意向が強く働く閣僚人事と異なり、副大臣・政務官については「各派閥の意向を踏まえて官房長官らがバランスを考慮しながら当てはめていく」ことが常道だとする。
 ポストに就く、いわゆる「適齢期」は、衆院議員だと副大臣が当選3~4回の中堅、政務官は当選1~2回の若手とされる。衆参両院の自民女性議員を見渡すと、大半が閣僚や副大臣、政務官を一度は経験。一方で男性議員には「待機組」が残る。今回は閣僚に女性が5人起用され「副大臣・政務官には意識が及ばなかったのだろう」とベテランの男性議員はみる。
 「女性局のフランス研修騒動が尾を引いた」との見方も。松川るい参院議員がエッフェル塔前でポーズを取った写真を交流サイト(SNS)に投稿し「観光旅行か」と非難された。入閣の下馬評もあった松川氏は8月に女性局長を辞任。「同行した議員も含め、政府入りは見送られたようだ」と派閥関係者は明かす。
 「女性ゼロはさすがにまずいと気づく人はいなかったのか」。ジェンダーと政治に詳しい上智大の三浦まり教授はあきれる。登壇者が男性ばかりの会議や委員会(PANEL)は「マネル(MANEL)」と呼ばれ、廃止するのが世界の潮流だという。
 副大臣、政務官で経験を積んで、将来リーダーになることを考えれば「チャンスを女性に与えていないことになる」と三浦教授。女性閣僚5人の起用で、岸田文雄首相が「女性ならではの感性を発揮してほしい」と発言したことを挙げ、女性を能力で判断せず「対等な存在と見ていないことが透けて見える」と話す。結局、ジェンダー格差の是正を目指すのではなく、短期的に支持率を回復させたい意図の表れに過ぎないとみている。
 ただ根本的な原因は自民議員に女性が少ないことにあることは間違いない。自民出身の議長を含めた衆参両院379人のうち、女性は45人。12%に満たないのが現状だ。
 女性の政治参画に詳しい岩本美砂子・三重大名誉教授(政治学)は「自民党が女性の人材を育成してこなかった結果だ」と指摘。「選挙の目玉として女性が出て議員になっても、その後はほったらかしている」と批判し、リーダーを務められる女性議員を増やすのが急務だと訴えた。