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<解説>賃上げ意欲 後押し重要


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 主要企業アンケートは、生成人工知能(AI)の登場や人手不足など事業環境が激変する中で、4割を超える企業が優秀な人材の獲得に賃上げを重視する姿勢を示した。賃上げ定着には稼ぐ力の向上が欠かせない。成長分野への支援や規制改革など、政府が一貫性のある施策で賃上げ意欲を後押しすることが重要になる。
 高度成長期を経て世界で輝いた日本企業はバブル崩壊後に業績が悪化。人件費を抑える経営を続け、日本の実質賃金は横ばいが続いた。
 一方、欧米の主要国ではこの間、賃金が上昇した。日本はITやデジタル化への対応でも遅れた。2023年の名目国内総生産(GDP)はドイツに抜かれ、世界4位に転落する見通しだ。
 企業は現状を危ぶむ。アンケートでサントリーホールディングスは「経済のダイナミズムを取り戻すため、賃金が高いか、人材を育てる企業に人が流れる仕組みづくり」を提言。「移民政策など人口減少局面から転換するための大胆な政策」(JR西日本)を求める声もあった。政府に対しては、半導体の国内拠点整備への支援などに一定の評価を与える一方、大量の国債発行を伴う積極財政に頼り、成長戦略を描けないことへの目は厳しい。日本経済が停滞を脱するには、企業と政府が両輪で課題に向き合う姿勢が求められる。