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工場を研究、収量5倍以上 暑さ弱い作物 県内周年栽培 ジャパンプレミアムベジタブル 自動制御で好環境構築


工場を研究、収量5倍以上 暑さ弱い作物 県内周年栽培 ジャパンプレミアムベジタブル 自動制御で好環境構築 ジャパンプレミアムベジタブルの吉田重信COO
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 沖縄科学技術大学院大学(OIST)イノベーションインキュベーター内に拠点を構える、スタートアップ企業「ジャパンプレミアムベジタブル」(恩納村、遠藤健次CEO)が、暑さに弱い農作物を年間を通して栽培できる工場「アジアモンスーン型植物工場」の研究開発を進めている。季節にかかわらず、トマトやイチゴなどを年間を通して収穫できるため、収量を約5~7倍に増やすことができるという。
 県内の農家所得向上や技術の海外輸出を目指す。吉田重信COO(最高執行責任者)は「2035年までに100億円規模の企業に成長させたい」と意気込んでいる。
 ハウス内の日射や温度、湿度などの環境データをセンサーで読み取り、調光カーテンや冷房設備などを用いて植物にとって適切な環境へと自動制御するシステムを構築した。高温多湿な環境では、つぼみが付いた状態まで苗を育てると結実が安定することからLED照明を用いた育苗装置も開発した。
 同社は16~23年度、石垣市内で実証試験を実施した。県内では主に12~3月の冬春期に収穫シーズンを迎えるトマトやイチゴで試験栽培を行った。5年間の試行錯誤の末、周年栽培が実現した。
 同社の植物工場では10アール当たりの収穫量が、トマトでは県平均の約5・8トンより6・8倍多い約40トン、イチゴが県平均の約2トンより5倍多い約10トンに増えた。
 23年度で実証試験が終了するが、今後は県内で農地選定を進めるなど、植物工場の普及を目指す。吉田COOは「これまで限られた時期しか収穫できなかった作物が1年を通して栽培できる。県内農家の所得向上につなげたい」とした上で「沖縄で確立した技術は東南アジア地域でも適用できる」と強調。23年末からインドネシアで実証試験を開始している。 (玉寄光太)