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裏金「不記載知らず」連発 衆院政倫審 野党「誰かがうそをついている」 「還流やめよう」 「困るから復活」 「最低の総理大臣」


裏金「不記載知らず」連発 衆院政倫審 野党「誰かがうそをついている」 「還流やめよう」 「困るから復活」 「最低の総理大臣」 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた衆院政治倫理審査会で、弁明中に汗を拭う高木前国対委員長=1日午後
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党安倍派幹部は、派閥の政治資金パーティーを利用した違法な裏金づくりの実態を本当に知らないのか。衆院政治倫理審査会2日目。出席した4人は政治資金収支報告書への不記載に関し「承知せず」を連発した。順法意識の欠如が際立ち、闇は深まるばかり。野党は「誰かがうそをついている」と迫る。2024年度予算案の衆院通過を懸けた攻防も相まって、国会は混乱に陥った。 (3面に関連)
 「22年4月に一度、資金還流をやめると決めたのは間違いないか」
 1日、衆院第5委員室。立憲民主党の枝野幸男氏が切り込んだ。弁明に立ったのは当時、安倍派事務総長だった西村康稔氏。会長代理の塩谷立、下村博文両氏や参院側を率いた世耕弘成氏、会計責任者の事務局長と協議し決定したと認めた。枝野氏ら野党がこの幹部協議に着目するのは、派閥のパーティー券販売ノルマ超過分を議員に還流するという「錬金術」について、会長だった安倍晋三元首相を含む幹部が違法性を認識していたのではないかと疑うためだ。西村氏らは核心を知り得る立場にある。
 西村氏によると、安倍氏は「現金での還流は不透明で疑義を生じかねない」として中止を提案したという。にもかかわらず、西村氏は「幹部協議では、収支報告書の話や還流が適法か違法かといった議論はしていない」と強弁した。塩谷氏も「不記載は話題になっていない」と否定した。
 西村氏ら同じメンバーは安倍氏死去後の22年8月上旬、再び集まった。同年5月の安倍派パーティーでノルマ以上にパーティー券を販売した議員から「超過分を戻してほしい」との声が多く寄せられ、「むげにはできない」として還流金の扱いを協議するためだった。
 「所属議員のパーティー券を派閥が購入する形はどうかというアイデアが示され、私自身も検討できるのではないかと発言した」と西村氏。発案者の名指しは避け、結論も「8月10日に経済産業相になったので知らない」と言い放った。
 では一体、誰の判断で還流の復活が決まったのか。塩谷氏は、8月に自身の議員会館の事務所で行った幹部会議を挙げた。「還流がなくて困っている人がいるから仕方ない、というぐらいの話し合いで継続になった」
 政倫審を通じ改めて浮き彫りになったのは、安倍派幹部の無責任ぶりだ。塩谷氏は、安倍氏の意向と逆行する還流復活に関し「当時は問題になっている状況ではなかった」と居直った。西村氏の後任事務総長である高木毅氏に至っては「状況を確認していないが、推測では23年は還流はないと思う」とあやふやだ。
 これには与党も厳しい視線を向ける。自民の橘慶一郎氏は「もう少し問題意識を持っていれば違った結果があった」と強調。公明党の中川康洋氏は「会計責任者と政治家の共謀が成立する状況ではないか。やはり不記載を知っていたのではないか」と突っ込んだ。
 政倫審2日目は、予算案の3月2日までの衆院通過にこだわった岸田文雄首相の意向で、与野党の対立が激化。結果的に政倫審のテレビ中継スケジュールは乱れに乱れた。初日の審査で、従来の説明をなぞっただけの首相をはじめ、政権としてこれで責任を果たしたと胸を張れるのか。
 立民の安住淳国対委員長は痛烈な批判を浴びせた。「誰とは言わないが『俺が政倫審に出たのだから、おまえらも格好をつけろ』と言う。日本で最低の総理大臣だ」