有料

離島の部活 地域と楽しく 独自プラン、過疎化対策も


離島の部活 地域と楽しく 独自プラン、過疎化対策も 長崎県立対馬高校の陸上部員らが盛り上げたスポーツイベント=2023年11月、長崎県対馬市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 公立中学校の部活動を地域のスポーツ団体などに委託する「地域移行」が進みつつある。過疎化を抱える離島の自治体ではこの流れを契機と捉え、地域を巻き込み活性化につなげようと独自プランの策定や拡充を図る。
 九州と朝鮮半島の間のほぼ中央に浮かぶ離島、長崎県対馬市では、高校進学時の島外流出を減らすため、技術力向上のほか陸上競技の魅力を小中学生に伝える事業を拡大する方針だ。元十種競技選手の林田章紀さん(36)は市の事業の一環で昨年4月に移住して、対馬高陸上部の外部コーチに就任。専門的な技術を教えるだけでなく「陸上を通して人とつながる面白さを感じてもらいたい」と熱く話す。
 同県諫早市出身の林田さんは現役引退後、指導者として五輪代表選手らを育てたが「足を速くすることを教えるだけでは陸上の人気は高まらない」との思いが芽生えた。高校部活動の魅力向上を図る対馬市と考えが合致。陸上部をほぼ毎日指導する傍ら、小中学校の出前授業も行う。
 昨年11月下旬、市や林田さんが企画したスポーツイベントには小学生約200人が参加。運営は陸上部員を中心としたボランティアが支えた。部員の永留康靖さん(17)はイベント前夜、魚をさばいて郷土料理をゲストに振る舞い「こんな経験は他ではできない。料理人という夢へ諦めずに頑張りたい」と目を輝かせた。会場では別の部員が得意のダンスを披露して盛り上げた。
 こうした体験から練習の質やモチベーションの向上につながったといい、林田さんは「パフォーマンスを上げることだけが部活じゃない。それぞれが得意な役割で自信を持ってほしい」と力を込めた。
 新潟県佐渡市では昨年9月から部活動以外の選択肢を増やし、地域とつながりを深める試みを始めた。原則、毎月第3日曜日に中学校の部活動を行わず、地域の大人が指導するクラブ活動に参加できる仕組みを構築。技術向上を目指す「スキップ型」と、マリンスポーツや鬼太鼓など島ならではの体験をする「エンジョイ型」があり、希望者は20種類以上の分野から選択できる。
 佐渡市によると、他校の生徒と交流したり、より細かな技術指導を受けられたりすることが好評という。今後は指導者研修の充実や、平日にも実施できる体制づくりを目指す。担当者は「島全体の協力を得て、佐渡らしさを生かそうと企画した。普段の部活ではできない体験を味わってもらえたら」と期待している。