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「~したい」 自ら問い立て探究 柔軟な学び、教員育成課題 軽井沢風越学園で実践


「~したい」 自ら問い立て探究 柔軟な学び、教員育成課題 軽井沢風越学園で実践 岩瀬直樹校長
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自ら課題やテーマを見つけ、個人の興味関心を深めたり、仲間と協力して考えたりする「探究学習」。長野県軽井沢町の「軽井沢風越学園」は、講義ではなく、探究が中心のカリキュラムを実践する先進校だ。
 岩瀬直樹校長は「私たちの考える探究とは、子ども自身の『~したい』から始まり、自ら問いを立て、深め、切り開く学び。自分で考え、行動を起こせば何かを実現できる体験の積み重ねが大切です」と話す。
 2020年4月開設の同学園は、3~15歳が一つの校舎で学ぶ幼稚園と義務教育学校の一貫校。23年4月時点で園児、児童、生徒は計283人、教職員数は59人。固定された学級はなく、異なる年齢で構成され、朝と帰りのつどいを過ごす「ホーム」と、授業を受ける2学年合同の「ラーニンググループ」がある。
 義務教育学校の3年生以上が対象の「プロジェクト」の時間では、「繊維のある暮らし」をテーマに7、8年生が少人数グループごとに議論していた。あるグループは、スピーカーに使われるコーン紙の繊維に着目し、音の違いを調べようとスピーカーの自作を計画。「ここの構造はどうなっているのかな」「部品は手に入りそう?」と声をかけ合いながら設計図を描いていた。
 他のグループは外部の専門家を招いて手動で糸を紡ぐ道具を見せてもらったり、繊維を取り出そうとキッチンに移動して野菜をぐつぐつ煮込んだり…。問いに向き合う生徒の表情は真剣そのもの。探究の成果は「アウトプットデイ」と呼ばれるイベントで発表される。
 学校運営でも子どもたちが「つくり手」になる。開校当初は運動会や部活動などは何もなかったが、岩瀬校長は「例えば修学旅行に行きたければ自分たちでプロジェクトを立ち上げるしかない。どこに何のために行くのかを子ども自身が考えて何度も作り直し、最終的に実現させました」。
 東京学芸大の大村龍太郎准教授(教育方法学)は「探究を取り入れようとする学校は増えている。社会の多様化に伴い、柔軟な学校づくりや、学びの在り方が模索される時代になった」と話す。
 探究による学習意欲、問題解決力の向上などが期待できる一方、授業を実践できる教員の育成が課題だ。「子どもが試行錯誤できる時間を確保するなど、探究のための学習環境づくりが不可欠。探究の方法には決まった型があるわけではなく、子どもが知りたいことに応じて柔軟にサポートする姿勢が求められます」