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全中学校に「F組」開設 愛知県岡崎市の校内フリースクール 生徒の関心に応じた教育課程


全中学校に「F組」開設 愛知県岡崎市の校内フリースクール 生徒の関心に応じた教育課程 愛知県岡崎市立矢作中の「F組」を案内する松永直樹教諭=6月
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教室に入りづらい児童生徒の受け皿として、全国で「校内教育支援センター」の整備が進む。「心のエネルギーがたまれば、生徒は自ら動き出す」。先行して取り組む自治体では、子ども一人一人の心情に寄り添ったサポートが行われている。

畳のスペースに、ギターや学校の畑で生徒が収穫した野菜…。6月、愛知県岡崎市立矢作中の「F組」と呼ばれる教室には、開放的な空気が流れていた。この日登校していたのは1~3年の約10人。勉強したりソファでくつろいだり、思い思いに過ごしていた。

岡崎市教育委員会は2020年度から「校内フリースクールF組」の開設を始め、23年度に全中学校への整備を終えた。F組は「Free(自由な)」「Fly(飛ぶ)」などから取った。

特徴の一つは生徒の関心に応じた独自の教育課程。工作や運動、デジタル端末での学習に野菜作りなど、技能教科を中心にいろいろな経験をする中で、生徒は自分の特長や可能性に気付く。自己肯定感が高まると、自然に他者との関わりが生まれるという。

安藤直哉教育長は「個性や特性を生かす教育を実現したい。子どもを学校に適応させるのではなく、学校が一人一人に合わせる考え方への転換が重要」と語る。

長期的な視野で生徒をフォローするため、F組には担任教員のほか市費で支援員も配置。すぐには気持ちが前に向かない生徒も、教員は信じて「待つ」ことを心がけている。

「どうすれば社会的自立に向けた力が育めるかという視点で見守っている」とF組担任の松永直樹教諭。在籍クラスへの復帰をゴールに設定してはいないが、行き来できるようになる生徒も少なくないという。

市教委は本年度から、小学校へのF組設置にも着手した。安藤教育長は「中学に比べ(生徒1人当たりの)教員数が少なく、担任の割り当てが難しい」と、国の支援を求めた。

(共同通信)