辺野古 解決策ならず 新春インタビュー①玉城デニー知事


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―政府は名護市辺野古の新基地建設の完了までに約12年、9300億円かかるとの見通しを示した。どう受け止めるか。

 「膨大な税金を投入しても普天間飛行場の一日も早い危険性除去につながらないことが明確になった。国民の理解を得られるのか国会議論も注視したい。普天間飛行場の危険性除去は喫緊の課題なので宜野湾市と連携し、辺野古移設と関わりなく政府に求めたい」

―戦後75年の節目の今年、平和発信にどう取り組むか。

 「沖縄全戦没者追悼式と広島市、長崎市、それぞれの平和記念式典への相互参列を調整している。悲惨な戦争の惨禍を被った3者が平和への強い思いを発信することは大変意義深い。沖縄全戦没者追悼式には国際連合の代表、事務総長を招待することも国連と調整を進めている」

―新たな沖縄振興計画の在り方をどう考え、計画策定をどう進めるか。

 「次年度に新たな振興計画の骨子案をまとめ、市町村や経済団体から意見を聞き、国と連携して検討していきたい。一括交付金制度で沖縄の特殊性に起因するさまざまな課題について県や市町村が主体的に取り組むことが可能となった。県政のさまざまな重要課題に対応していく上でも必要だ」

―中高生のバス通学の無料化は全員対象にできないか。

 「高校生のバス通学支援については、これまでのひとり親家庭に加え次年度から非課税世帯の生徒へも拡充を検討している。家庭の経済環境にかかわらず、安心して学業に励むことができるように高校生のバス通学無料化を公約に掲げた。中学生も入れ込もうと考えるが、継続性の観点も踏まえ検討している」

―北中城村の知的障がいのある仲村伊織さんについて、学びを保障できないとした教育長見解をどう受け止めるか。

 「他県では重度知的障がいのある生徒を高等学校で受け入れる事例もあると聞いている。そのような先進事例を、県も教育委員会もしっかりと研究することによって、沖縄らしいインクルーシブ教育の扉を開くことは十分可能だ」

―長期高齢化した引きこもり者と家族の支援に関して県の方針について伺う。

 「県は2016年10月から引きこもり専門支援センターを設置して、本人および家族などの相談支援、支援者の人材育成のための講演会や組織研修会などを行っている。市町村と連携して居場所づくりなど身近な市町村支援を検討していきたい」

―北部基幹病院について開院に向けた調整状況は。

 「現在、北部基幹病院の基本的枠組みに関する合意書案について関係者で協議している。基本構想策定など次の段階に進むためには、基本的枠組みに関する合意書の速やかな形成を図る必要がある」

―新しい年への抱負は。

 「焼失した首里城など重要なテーマもある。20年も大きな事業を抱えており、華やかな場面が描かれる半面、国際情勢に目をやりながら、県が果たせる平和、経済振興の取り組みなど、日本全体に寄与するアジアの玄関口である県の存在意義をしっかりと高めていけるよう、世界に向け、その姿勢を発信していきたい」

(聞き手 松堂秀樹・当間詩朗・明真南斗)

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設は、昨年2月に埋め立ての賛否を問う県民投票が実施され、投票総数の7割が「反対」の意思を示したにもかかわらず、政府は工事を継続し、2019年も県と国は法廷闘争を繰り広げた。一方、昨年10月に全焼した首里城の復興を巡っては、県と国が早期再建で一致。双方連携し再建のスケジュールを検討しており、対立と連携のはざまで新年も重大な局面が続きそうだ。あと2年で期限切れを迎える現行の沖縄振興計画の次期計画を見据え、2020年は沖縄振興の今後の在り方がこれまで以上に議論されるとみられる。2020年の展望などについて玉城デニー知事に聞いた。