全国の1・3倍 なぜ沖縄の3年内離職率が高いのか? 懸念されることは?


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 沖縄県内の高校や大学を卒業して就職した人のうち、3年以内に離職する早期離職率の割合が高卒で約5割、大卒で約4割と、全国平均の約1.3倍に上ることが5日までに分かった。正社員の求人が少ない県内では、離職後、正社員を希望しても働き口がない「不本意非正規」になる可能性が大きいとみられる。

 沖縄労働局は「離職後に非正規社員となる割合が大きく、将来的に賃金格差などのリスクを抱える可能性がある」と分析している。就職者には早い時期から就職活動を始めるよう呼び掛ける一方、企業には人材育成や働き方改革による離職防止・定着促進を求めている。

 同局によると、2016年3月に県内の高校・大学を卒業した就職者が3年以内に離職した割合は、高卒は50.4%、大卒は41.2%だった。

 離職率の内訳を見ると、高卒者の離職率は1年目は23.4%、2年目は12.8%、3年目は13.6%。大卒者の離職率は1年目は17.2%、2年目は13.6%、3年目は10.2%だった。高卒者、大卒者とも、1年目の離職率が高かった。

 高卒者の離職理由として多かったのが「仕事が自分に合わない」で、「人間関係が良くなかった」「休日休暇の条件が良くなかった」が続いた。大卒者も上位三つは同じ理由だった。(関口琴乃)

就活開始遅れに原因 企業の定着促進も重要

 高校や大学の卒業者が就職後、早期に仕事を辞めた人は、就職活動の開始時期が遅かった傾向がある。離職率が高い原因について沖縄労働局職業安定部の村上優作部長は「仕事の内容や社風をしっかり理解しないまま、入社したと考えられる」と指摘。「企業の情報収集や自己分析を十分にせず、会社の名前やイメージだけで選んで入社すると、実際に働いたときにギャップを感じる。会社で何をやりたいかを考えると同時に、得意としない仕事や部署に配属された場合も想定して会社を選ぶべきだ」と述べ、時間をかけて就職準備をする重要性を強調した。

 離職後は再就職先の雇用形態や賃金などの不安要素が残っている。現在、人手不足を背景に学生にとって売り手市場が続いている。

 しかし村上部長は「辞めても新しい仕事を見つけられると考えるかもしれないが、売り手市場なのは新規学卒者に限られる」と強調する。19年11月の正社員の有効求人倍率は0・63倍で、離職後、希望者が必ず正社員になれるとは限らず、次に得られる職が前に比べて内容や条件が悪くなる可能性もあるという。

 また、日本では年功序列の賃金制度が多いため、勤続年数が長い正社員が優遇される。厚生労働省の17年の賃金構造基本統計調査によると、全国の正規社員と非正規社員では年齢が高くなるにつれて賃金格差が広がっている。特に50~54歳の男性非正規社員の月給は、男性正規社員の半分程度となっている。

 経験に応じて給与を考慮する企業もあるが、再就職先の同年代と比較され、必要なスキルや技能がないと正社員になれず、非正規から抜け出せない厳しい状況もある。

 企業にとっても社員の離職は、採用や人材育成にかかるコストが無駄になるだけでなく、長期的に優秀な人材を育成できず経営戦略上の痛手になる。

 企業の人材定着について村上部長は「仕事内容や求める人材、労働条件など情報を開示してミスマッチをなくす。従業員のニーズに応えた働き方改革を進めることが重要だ」と述べた。

 その上で「人を育てるのは会社の責務だ」と指摘し「どのように一人前に育てるかという構想がないと従業員は不安だ。教育訓練などにお金を使ってほしい。それだけ力を入れて育てることは相手に伝わり、離職防止につながる」と強調した。