草の根運動、SNS駆使し情報拡散 新たな抗議のうねり<民の思い背に 自己決定権の道標>②


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バルセロナの国際空港に押し寄せた市民ら=2019年10月14日、スペイン・カタルーニャ自治州(友知政樹氏提供)

 カタルーニャ自治州の独立運動を主導してきた市民団体は、カタルーニャ国民会議(ANC)、文化団体オムニウム・クルトゥラルの二つがある。しかしスペイン最高裁の判決に抗議し、住民が空港に押し寄せた昨年10月14日のデモは、それらの団体が呼び掛けたものではなかった。高速道路を埋めた民衆は、それぞれスマートフォンを手に、どこからともなく集まっていた。

 赤信号をあえて無視して交通を寸断し、高速道路にも押し寄せて判決の不当性を訴える。市民的不服従の志に共感して行進に加わる人、クラクションで賛同の意思を示す運転者もいた。SNSを駆使して情報を拡散し、取り組まれた「ツナミ・デモクラシア」(民主主義の津波)と呼ばれる新しい運動だ。

 この運動は近年、バルセロナだけでなくスペインの首都マドリードを含め、さまざまな場所で群発的に取り組まれてきた。中央政府や国家警察の警戒をすり抜けるような機動的な運動で、誰が主導しているのかといった実態は明らかにされていない。ただ非暴力を基調としている点はANCやオムニウム・クルトゥラルの運動と共通する。「私たちは攻撃されても暴力的に闘うことはありません」などとする「非暴力に関するガイドライン」が公開されている。

 インターネットを駆使した運動は、国家権力による暴力を告発する力にもなっている。バルセロナ国際空港で、座り込む丸腰の市民を国家警察が警棒で殴る映像はSNSですぐに拡散された。2年前の住民投票の際も、国家警察が投票所で市民を殴り、投票箱を押収した映像も世界中に発信されていた。

 草の根の連帯は世代を超え、各界に波及している。サッカーのFCバルセロナも、スペイン最高裁の判決に抗議する声明を出した。カタルーニャの「ナショナル・デー」とされる9月11日にANCなどが催す恒例のデモは参加者数が増減を繰り返すが、並行して運動の多様化が進んでいる。

 カルラス・プチデモン前州首相は新たな運動について「カタルーニャの人々の強さを示す重要な動きだ。公的機関や政党などではなく、市民一人一人の力によって組織化された運動だからだ」と強調する。「それを可能にしたのがスマートフォンだ。カタルーニャの独立運動だけでなく世界のさまざまな課題を解決するツールになり得る。力はもはや人々の手の中にある」と述べた。

(宮城隆尋)


 スペイン北東部カタルーニャ自治州で、自己決定権回復を求める運動が転換点を迎えている。沖縄と共通する課題を抱える人々の現在を取材した。