[日曜の風]日本の司法制度 おかしさに気づいて


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 保釈中の身でありながら日本から出国し、レバノンで記者会見を行ったカルロス・ゴーン日産元会長。百日以上の勾留、保釈中の家族との接見制限など日本の司法制度は人権を侵害している、と怒りをあらわにした。

 思えば辺野古新基地建設の反対活動で逮捕された山城博治さんは、5カ月以上、故人となった添田充啓さんに至っては6カ月以上、拘置所に留め置かれた。拘留中はもちろん、保釈後も接見など行動の自由は著しく制限された。

 逮捕されて起訴されたといっても、その時点ではまだ犯罪者と確定したわけではない。裁判を通して検察が罪の立証を行い、裁判官が判決を下して初めて、刑が決まる。

 裁判所は勾留しておかないと逃亡や証拠隠滅などのおそれがあるとして保釈をなかなか認めたがらないが、山城さんにしても添田さんにしても、証拠となる書類やメールはすべて検察に押収されており、それ以上、隠しようのない状況だった。

 添田さんに面会するため何度か拘置所を訪れたが、半年以上も狭い独居房で生活する中で次第に心身が弱っていくのが手に取るようにわかり、かける言葉も見つからなかった。

 一番悔しかったのは、それを知人に話したら、「だって悪いことをしたんでしょ」という反応が返ってきたことだ。まだ裁判も始まっておらず、本人は無実を主張している。

 「悪いことをした」とはまだ決まっていないのに、「逮捕されて勾留されている」となると世間はすっかり有罪だと思い込むのだ。

 日産の会長時代は容赦ないリストラを続け、決して人権意識が高いとはいえないゴーン氏だが、長期勾留の問題などに限っては、山城さんたちの苦境が理解できるのではないだろうか。

 今回のことを機に、多くの人たちが「日本の司法制度は国際的に見てもおかしいのだ」と気づいてほしいと願う。

(香山リカ、精神科医・立教大教授)