「わがままでならず者」 少数派として抑圧されヘイトとも闘う 全国世論ともかい離<民の思い背に 自己決定権の道標>⑦


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スペイン内戦時の爆撃の跡が残るサン・フェリペ・ネリ教会。カタルーニャに対する政治的抑圧の象徴でもある=バルセロナ

 「カタルーニャの人々はいつも何かを欲しがっている」「法に従わないのは身勝手だ」「カタルーニャの民族主義が極右の台頭を許した」―。スペイン各地の人々から、時折カタルーニャに投げられる言葉だ。

 カタルーニャ自治州は観光業や工業に支えられ、域内総生産(GDP)が首都マドリードを超えるなど、経済的に豊かな地域だ。しかしスペイン継承戦争で敗北し、スペイン内戦でもフランコ将軍側に敗れるなど、政治的には国内の少数派として抑圧されてきた。

 その中で自己決定権の回復、独立を求めて中央政府との対話、交渉を重ねた。しかしマドリードやスペインの全国的な世論はカタルーニャからかなりの距離がある。「わがままなならず者」と捉える見方も根強い。独立の是非を問う住民投票があった2017年以降は特に、カタルーニャ州の自治権の停止、剥奪などを主張するシウダダノス(市民党)や極右のVOX(ボックス)が総選挙で得票を伸ばした。

 中央政府当局に拘束された州政府の元閣僚らを「釈放すべきか」との世論調査でも、釈放賛成が多いカタルーニャとは逆に、全国的には「釈放すべきでない」との意見が多数を占める。 毎年9月11日のナショナル・デーに大規模デモを催してきたカタルーニャ国民会議(ANC)のジョルジ・ビラノバ理事は「カタルーニャは常に非暴力で対話を求めてきた。中央政府と交渉することの何が悪いのか」と反論する。

 州政府元閣僚らが訴追されたことに関して「気に入らないのなら法律を変えればいい」との意見もあるが「それは少数意見の無視で民主主義ではない。フランコ独裁時代にも法はあったが、当時の裁判所は独裁政権のルールを人々に押し付けるところだった」と指摘する。

 スペインの全国紙とカタルーニャの地方紙は、見出しも報道姿勢もまったく異なる。州政府系の報道機関設立にも携わったカルラス・プチデモン前州首相は「強力なプロパガンダマシーンである中央政府と闘うには独自のメディアが必要だ。住民投票の際も『独立運動によって経済が混乱する』などフェイクニュースが飛び交った。事実をデータとともにスペイン全国、海外にも発信することが大事だ」と強調した。

(宮城隆尋)


 スペイン北東部カタルーニャ自治州で、自己決定権回復を求める運動が転換点を迎えている。沖縄と共通する課題を抱える人々の現在を取材した。