バスやモノレール…飛行機を降りた後の交通に課題 軍民共用のリスクも 第2滑走路利用開始


社会
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 沖縄県経済の活性化に向けて待ち望まれた那覇空港第2滑走路の利用が26日から始まり、滑走路の整備を進めてきた国土交通省大阪航空局と内閣府沖縄総合事務局は29日に、供用セレモニーを那覇空港で開いた。空港利用者の増加に伴うバスやモノレール、タクシー、レンタカーなど2次交通の受け入れ対応が今後の課題となり、軍民共用空港のリスクも引き続き横たわる。

浦添延長区間が開業した初日、通勤・通学者らで混雑するモノレール駅=2019年10月1日、那覇市のおもろまち駅

 那覇空港の滑走路が2本になって航空機の受け入れ容量が拡大したことで、空港に降り立った旅客が目的地まで向かう2次交通の利用も増加が見込まれる。新型コロナウイルスの感染終息後の観光客回復を見据えてそれぞれの機関で対策が必要となっている。

 近年の観光客の急増に伴い、那覇空港の到着口ではレンタカー事業所まで送迎するバスを待つ旅客の人だかりで生じる混雑が課題となっている。空港付近の交通渋滞のため、事務所まで移動してレンタカーを借りて出発するまでの時間も長くなり、沖縄観光の不満要素になっている。

 本来は禁止されている那覇空港の駐車場でレンタカーを受け渡しする違法営業が後を絶たず、空港の混雑に拍車を掛ける。空港の駐車場も不足しており、新たな施設整備だけでなく、公共交通の利用促進にも取り組む必要がある。

 しかし、那覇空港駅を始終着駅とする沖縄都市モノレール(ゆいレール)は観光客の増加や浦添延長で乗降客が右肩上がりで伸び、車内や駅の混雑が悪化するなど受け入れ余地がない状況がある。県などは、現在の2両編成を3両化することで輸送力の強化を図ろうと急いでいる。

 路線バスは観光客には路線や系統が複雑で、表示も分かりにくいといった不満が指摘されてきた。外国人客が増える中で言語対応も課題だ。2018年に新たな那覇ターミナルが完成するなど利用促進の機運が広がっており、デジタル技術を使って観光客でも手軽にルートや発着時間が入手できるような環境の整備など利便性を高めるための模索が続いている。


過密化や事故危険性

けん引され航空自衛隊那覇基地へ向かうE2C早期警戒機。空港の閉鎖で民間機の運航に影響が出た=2018年7月17日、那覇空港

 那覇空港は民間の航空機と自衛隊機との共同使用となっている。第2滑走路の運用が始まっても、航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)などによる滑走路の過密化や事故の危険性など、軍民共用に起因する課題は残っている。

 防衛省統合幕僚監部によると、那覇空港(那覇基地)を拠点とする南西航空方面隊による緊急発進は2015年度531回、16年度803回、17年度477回、18年度596回。19年度は12月末現在で461回だった。中国軍機の活動に警戒を強めるなど、他地域の自衛隊と比べて高頻度となっている。

 過去に自衛隊機と民航機が絡む事故や重大事案(インシデント)、自衛隊機が滑走路にとどまっていたことによる民間機の着陸やり直しなどが発生した。

 18年に空自のE2C早期警戒機のタイヤがパンクし滑走路が1時間41分にわたって閉鎖された際は、県議会が「民間専用化が強く望まれている」と訴える意見書を全会一致で可決している。