卸売市場、参加者限定も検討 競りで密集対応苦慮


この記事を書いた人 Avatar photo 大城 誠二
感染防止のため、競り中も仲買人らはマスクを着用する=14日早朝、那覇市の泊魚市場(泊魚市場有限責任事業組合提供)

 競り人の威勢のいい掛け声が響き、多くの仲買人が密集する競り。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、農作物や魚介類を競りにかける卸売市場は、濃厚接触による感染拡大を避けなければならないと対応に苦慮している。県民の「台所」に直結する市場は社会生活に欠かせないインフラ機能だけに日々の業務を継続しなければならず、市場関係者は対策に追われる。

 那覇市の泊魚市場では、早朝から多くの仲買人が集まり、鮮魚を競り落とす。新型コロナ対策で参加者にはマスクの着用が求められている。市場を運営する泊魚市場有限責任事業組合(LLP)は、競りに参加する仲買人を1社1人に限定することや、組合職員を2班体制にして1日交代で勤務させることを検討中だ。ただ1日の勤務者が減った場合に全ての魚をさばけるか不安もある。LLPの石川毅市場業務課長は「水産物をさばけなかった場合に生産者への補償はどうなるか。行政が(対策を)決めかねている中で、なかなか答えが見つからない」と手探り状態だ。

 県外の卸売市場では、感染拡大防止のため、競りの取引を中止した例もある。北海道の札幌市卸売市場は3月上旬から競りを中止し、青果物や水産物の取引を、競り人と仲買人の1対1となる相対に変更した。同市場の担当者は「市場の業務を継続させるためにも、独自で感染拡大予防の措置を取った」と話す。

 県内外の青果物や花が集まる浦添市の県中央卸売市場。県外産のタマネギやキャベツ、ニンジンはもともと相対で取引される。品質が均一で定量入荷のため取引価格の変動が小さく相対取引に適しているからだ。一方でこの時期の県産野菜は鮮度が命の葉野菜が中心のため、相対取引に適さないという。県農林水産部中央卸売市場の担当者は「競り人の見立てで価格が大きく動くため、取引方法を変えるには限界がある」と説明する。

 食材を扱う場所だけに、市場関係者は市場で感染者が出た場合に風評被害が起こることも懸念する。農林水産省卸売市場室の担当者は「食品を介して新型コロナに感染した事例はない」と断言し、食品を介した感染を否定する。ただ、中央卸売市場を運営する県農林水産部の担当者は「風評被害もとらえ方としてはあるかもしれない。情報を開示すれば県民にも納得いただけるだろう」と語った。

 日々の業務と並行しながらの感染対策は、市場運営者を疲弊させる。LLPの上地栄樹市場課長は「市場として安全に、県産食材を県民に届ける。安心して食べてほしい。その一心だ」と声を振り絞った。