職員感染のデイケア再開「皆が元気、ほっとした」 密接避けられない中で葛藤も


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体操をして体をほぐすデイケア利用者ら=27日、名護市の「桃源の郷」

 【名護】デイケア職員の新型コロナウイルスへの感染が確認されていた名護市の介護老人保健施設「桃源の郷」は27日、他の職員や利用者への感染が2週間確認されなかったとして、15日ぶりにデイケアを再開した。「やっと風呂に入れた」。利用者は安堵(あんど)の表情と笑顔を浮かべた。介護の現場は「密接」が避けられないが、地域の福祉を維持しようと職員らが葛藤を抱えながら奮闘している。

 3月下旬、本島中部の男性が名護市の実家で母親のデイケア利用を相談した際、デイケア支援相談員の30代女性が同席した。

 4月上旬に男性の感染が判明した後、12日には女性の感染も明らかになった。デイケアの職員13人中12人が女性の濃厚接触者として、およそ2週間の自宅待機となった。

 上地常義事務長は「しまったと思った。入所者の面会禁止や職員の検温など対策していたが、外での感染は想定外だった。油断した」と悔やんだ。

 27日、デイケア利用者約40人のうち23人が来所した。昼食や体操、リハビリなどで普段通りの時間を過ごし、笑顔をのぞかせた。歩行が困難な比嘉泰秀さん(72)=市久志=は久々に入浴し「さっぱりした。風呂は体を支える人が必要だから家では難しい。デイケアがないと困る」とにこやかになった。一方、「緊急事態宣言の解除までは」と来所を控える利用者もいる。

 昼食や入浴をデイケアに頼る利用者や家族は多い。陽性から復帰した相談員の女性は「サービスの休止で不便を掛けてしまった。利用者や同僚を感染させていないか入院中も心配だった。皆の元気な姿を見てほっとした」とかみ締めるように話した。

 入浴やトイレの介助は密着が避けられない。介護職の50代女性は「体を密着させてしっかり支えないと事故の元になる。感染の不安は拭えないが、こまめな消毒やマスク着用で防ぐしかない」と複雑な心境を口にした。施設では職員出勤時の検温で仕事を休む目安を37・5度から「微熱」に引き下げた。利用者が自宅を出る前の検温に加え、家族らに体調をしっかり確認するようになった。

 上地事務長は「外で感染するリスクはあるが、地域に必要とされている。体調の異変を見逃さないよう健康チェックを万全にして、防ぐ他に手だてはない」と力を込めた。

(岩切美穂)