クロマグロも旬なのに…沖縄の農水産物、減便で困った 増える冷凍在庫


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 新型コロナウイルスの影響で沖縄を離着陸する航空機が減便し、県産農産物や水産物の流通に影響が生じている。航空路線の縮小によって輸送容量が低下し、鮮度を売りに航空貨物で輸送される水産物や果物は搭載できる貨物コンテナの数に制限がかかる。最盛期のクロマグロなどの鮮魚類や活車エビの県外輸送が制限され、冷凍在庫を抱えている。今後の中元シーズンに向けて全国的に贈答需要が高まるパインやマンゴーの高級果実の輸送にも影を落としてきている。

最盛期を迎える県産クロマグロ=28日、那覇市の泊いゆまち

 沖縄近海で捕れるクロマグロは4月1日に今年の漁期に入った。沖縄で捕れるマグロは、冷凍しない「生鮮マグロ」として全国に流通する。通常は専用のコンテナに積まれ航空機で輸送されるが、新型コロナの影響もあって輸送に制限がかかり、他業者とコンテナの競争状態にある。

 県漁業協同組合連合会の亀谷幸夫専務理事は「行き場を失ったマグロは県内でさばくしかない。だが外食産業の多くが休業してマグロの需要も減っている。魚価も低迷している」と頭を抱える。

 生きた状態で流通する車エビも、減便の影響は大きい。県車海老漁業協同組合によると、県内産地はこれまで東京、大阪、名古屋、福岡など複数の主要都市に輸送していたが、航空機の減便によって東京だけの輸送となった。

 輸送会社から割り当てられた量を輸送するだけにとどまり、本来は「活(い)き」が売りの車エビを冷凍して、在庫として抱える産地もある。

 観光客減少で消費が落ち込み、車エビの価格も1キロあたりで通常4千~5千円していたのが、3千円を下回ることもあるという。

 久米島町内の車エビ養殖業者は、輸送制限や取引先飲食店が休業したことなどで通常の3倍ほど在庫を抱える。担当者は「できる限り物の行き来は確保してほしい」と訴えた。

 6月中旬から8月にかけて出荷されるマンゴーは贈答用として定着し、JAおきなわ取扱量の4割が県外に送られる。航空路線の便数が回復しなければ計画通りに県外に出荷できない可能性もあり、JAおきなわは県外だけでなく県内向けにも販売促進のシフトを移していく。

 JAおきなわ営農販売部の担当者は「減便で輸送は厳しい状態だ。県内消費を強化するため、いかにして県民に食べてもらうか取り組みたい」と話す。

(石井恵理菜)