売り上げマイナス96% 本部・中條さん 先行き見えず焦り<コロナ禍県議選>


売り上げマイナス96% 本部・中條さん 先行き見えず焦り<コロナ禍県議選>
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 本部町の中心部から離れて山道を上る。雨音と呼応するように生い茂った木々が揺れていた。まだ新しい、開業して2年目のコテージハウス。テレビもない、こぢんまりとした小さな空間に中條有規さん(52)の姿があった。長年働いた会社を早期退職し、宿泊施設を始めたばかりだった。長年の夢だった。だが、今の表情は苦り切っている。「4月の売り上げはほぼゼロ。収入はマイナスです」

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月以降の宿の電話やファクスは、キャンセルばかりだった。4月の売り上げは前年のわずか4%にまで落ち込んだ。5月もほぼ同じ9割減を見込んでおり、回復の見通しが立たない。「今はまだ、貯金を切り崩して食いつないでいる。このまま日常が戻らなかったら、手取り収入のあるアルバイトを始めるしかない」

 沖縄観光は危機にある。県は休業要請に応じた業者に対し協力金の支給を決めたが、宿泊業は対象外だった。本部町観光協会によると、新型コロナの影響を受け、町内では同じような小規模宿泊施設が既に4軒廃業した。全国的に緊急事態宣言は解除されたが、都道府県をまたぐ移動は今も自粛が求められ、海外からの旅行客も見通しが立たない。営業を再開しても観光客が戻らない以上、宿泊業は成り立たない。「明日は我が身」の言葉が頭をよぎる。

 新型コロナを受け、今後の宿の方針を変えざるを得ないかと頭を悩ませる。国際アロマセラピストの資格を持つ妻の永遠子さん(52)が施すシークヮーサーや月桃を配合したアロマトリートメントは、密室空間で施術する。「窓を開けっ放しにすることもできないし、政府が言う新しい生活様式をすべて実行できるわけがない」

 不安なのは、こうした窮状が政治や行政の現場に届いているか分からないことだ。永遠子さんは「小さな宿が努力しても、目立たず伝わらない。うまくいかない」と限界を感じている。「県民向けのキャンペーンとかを県がしてくれたら。県内の人が日帰りでも来てくれたら、少しでもにぎわうかな。早く沖縄の日常を取り戻したい」

 庭にはトマトやドラゴンフルーツの実がなっていた。「お客さんが戻ったらカクテルとして出したいなって」と永遠子さん。2人は知恵を絞り、今できることを一つずつこなす。笑顔が戻ってくる日を待つしかない。 (’20県議選取材班)