外来患者減、薬局直撃 薬剤師会 厚労省に支援要請


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「不安もあったが、薬局の役割を果たしてきた」と語る豊見城薬局の長谷川幸司薬局長(右)と管理薬剤師の柴田さと美さん=5月27日、豊見城市宜保

 新型コロナウイルス感染症が流行する中、社会生活を支える業種で働く人はエッセンシャル・ワーカーと呼ばれる。その現場の一つが調剤薬局だ。処方箋があれば薬剤師は対応する義務が薬剤師法で定められ、薬局は休業することが難しい。外出自粛に伴う外来患者が減少し、従来より長期分の処方薬を求める人が増え、薬局の経営を直撃している。日本薬剤師会は3割超の薬局が赤字経営になると推定しており、調剤薬局の存続支援を厚生労働省に要請した。

 日本薬剤師会の5月20日付の要望書では、新型コロナの影響で長期処方が増えれば、薬局の収入源になる技術料を得る機会が減るなどと指摘した。長期処方に対応できる多くの在庫を維持するため、資金繰りの悪化も想定されるとしている。

 ジーセットメディカル(豊見城市)は県内で薬局6カ所を運営する。一部の薬局では、処方箋の枚数が通常期の4分の1ほどに減った。これまで感染リスクから患者と職員を守りながら、営業を続けてきた。

 政府は感染症患者に対応した医師や看護師ら医療機関の職員に、慰労金として1人当たり最大20万円を配る。介護施設の職員に対しても同様に手当てする。一方、薬剤師は対象に明記されていない。ジーセットメディカル人財開発室の根岸康雄参与は「薬局には新型コロナの保険診療の加算もない。感染リスクの中、患者のため働いてきたのは同じ。制度のはざまで抜け落ちている」と嘆いた。

 ジーセットメディカルが運営する豊見城薬局は、新型コロナに不安を抱く患者にも対応してきた。感染予防のため短い時間で服薬の注意点などを伝えなければならず、職員の負担も増えた。

 管理薬剤師の柴田さと美さんは「経験のない緊張感だったが、患者さんの理解もあったからできた」と強調した。薬局長の長谷川幸司さんも「海外渡航歴や発熱がある患者と対応し、職員も不安を覚えただろう。しかし、処方薬が必要な人にはしっかりと薬局の役割を果たしていきたい」と使命感をのぞかせた。
 (大橋弘基)