「コロナ無症状感染、発症者の16倍」 沖国大・友知教授らが新たな数理モデル


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【宜野湾】沖縄国際大学の友知政樹教授らが、新型コロナウイルスの感染拡大を分析する新たな数理モデル(連立微分方程式)「SIIR」を考案し、7日に同大学で開いたオンライン研究会で論文を発表した。友知教授は同数式による計算で「感染しても症状のない無発症感染者の数は、症状のある感染者数の約16倍に達する」との見方を明らかにした。

オンライン研究会で連立微分方程式について説明する友知政樹沖縄国際大学教授(右下)

以前から用いられてきた感染拡大の実態を分析する数理モデルは「SIR」と呼ばれる。感染者数や抗体を持つ人、持たない人の数などから感染がどのように拡大するかを計算する。しかし新型コロナは無発症、未発症(潜伏期)でも感染力があり、感染が急拡大する要因とされてきた。従来の数理モデルでは実態が捉えづらいとの指摘があることを踏まえ、友知教授らはSIRに無発症感染者を加えてSIIRとした。

SIIRを活用して東京、沖縄、全国の感染者数を計算したところ、実際の感染者数を再現できたという。友知教授は、SIIRが新型コロナ感染症に「適合的だ」と評価した。回復者が獲得する抗体の持続期間に限りがあることも考慮した。

友知教授は「無発症感染者を明示的に取り扱うことが重要だ。PCR検査の拡充で無発症感染者の洗い出しが進めば、感染拡大のスピードを抑えることができるだろう」と強調した。

その上で「対人接触の減少や休業要請は社会に負の効果をもたらす。どのような政策が有効か検討するためにも(新たな数理モデルによる検証が)必要だ」と語った。今後はSIIRを諸外国の感染状況と照らし合わせて検証を進め、「早期終息に向けた政策課題を検討したい」と述べた。

論文は河野光雄中央大学名誉教授との共同執筆で、1日にインターネットで公開した。論文のURLはhttps://researchmap.jp/mtomochi1234/works/29321715