コロナ差別のない世界に ゆいマスクプロジェクト、啓発へポスター無料配布


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
「支え合いの気持ちと行動を沖縄から広めたい」と話す田邉裕貴さん=17日、那覇市泉崎

 「『コロナになりました』と言える世界に」―。新型コロナウイルスの感染者数が増加する中、感染者やその周囲へのコロナ差別をなくそうと、異業種の有志団体「ゆいマスクプロジェクト」は県内企業や行政を中心にポスターの無料配布を開始する。

 発案者の田邉裕貴さん(40)=那覇市=は、子どもが通う保育園で濃厚接触者が確認され、周囲から冷たい態度を取られた経験がある。ポスターを通じて差別を知り、考えるきっかけをつくりたいと考えている。

 「うわ、コロナなの?」。田邉さんの子ども2人が通う保育園で7月、新型コロナの濃厚接触者が確認された。周囲に伝えると、不安の声が聞こえ始めた。「まるでばい菌扱いされているようで、一歩引くような雰囲気や冷たい視線を覚えている」。感染への不安から感染者の特定に注目が集まる現状もあるという。コロナ差別が広まれば、自分自身が感染した時の不安も大きくなる。「差別の対象になりたくないと考え、疑いがあっても検査を受けなくなると、結果的に感染を拡大させてしまう恐れがある」と危惧する。

 ゆいマスクプロジェクトはポスターの配布を通じて、個人や特定の集団に対する負のイメージを意味するソーシャルスティグマ(社会的負の烙印(らくいん))の存在を周知し、自らの言動や行動を考えるきっかけづくりを目指す。ポスターでは差別によって感染が広がる様子を図で説明し、(1)感染者個人の特定(2)発信源のわからない誤った情報やうわさの拡散(3)差別的な表現―の3点を「やめよう。とめよう」と呼び掛ける。

 制作費用は同プロジェクトが負担し、活動に賛同する県内企業や行政を中心にポスターを配布する。田邉さんは「将来、感染者に対する第一声が『うわ、コロナなの?』ではなく『大丈夫?早くよくなってね』と、相手を優しく気遣う言葉になったらいい。支え合いの気持ちと行動を、沖縄から世界へ発信したい」と語った。

 問い合わせは、田邉さんが代表を務めるプロジェクト参画企業のアザナ(電話)098(987)4761。(吉田早希)