犠牲当然視に異議 万国津梁会議提言 発想転換で基地集中解消


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 県が設置した「米軍基地問題に関する万国津梁(しんりょう)会議」の提言書は、米中対立が激しくなる中でも沖縄への基地集中を解消する方策を追求している。軍備を拡大する中国への対抗を理由に沖縄の犠牲を当然視する言説に、異議を申し立てる論理となり得る。米軍の存在を真っ向から否定するのではなく、安全保障環境の厳しさも踏まえた上で発想の転換によって問題を解決する狙いが読み取れる。 

 会議が最初の提言書を県に提出した2020年3月、部隊の分散化が沖縄の基地負担軽減につながるとの期待があった。実際は、その直後から米軍が沖縄を軍事拠点として改めて重視する動きが出てきた。

 日本政府や支持者の思考は、中国脅威論に基づいて日米同盟一辺倒に陥り、沖縄の基地負担はやむなしとなる傾向にある。しかし会議が示した考え方はその逆だ。対中戦略で米国が日本を含む周辺地域を重視しているからこそ、地元の意向を聞き入れる可能性が高まっていると指摘した。

 沖縄の米軍基地を分散させる方法として、前回の提言書に引き続き、県外の自衛隊基地の共同使用やアジア各地への分散を挙げている。その上で日米地位協定の課題を乗り越えて各自治体が基地被害を抑制するためにできる取り組みとして、地域の防衛局と協定を結ぶことを提案した。分散の実現可能性を高めるために必要な議論だ。

 前回の提言書は県が活用方法を明示せず、長期間その位置付けが曖昧なままだった。今回は提言を十分に活用できるか、玉城デニー知事の主導力が問われている。 (明真南斗)