戦前・戦中に沖縄から持ち去られた文化財はどうなってる?経緯や状況調査へ 県立博物館


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元米兵から返還された釣り鐘=2日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館

 沖縄戦で米国に持ち去られた釣り鐘が76年ぶりに返還された。製作時期や製作地、どこから持ち出されたのかなど詳しいことは分かっていない。戦前の貴重な文化財は沖縄戦で破壊されたほか、米国へ「戦利品」という形で持ち出され、散逸した。県立博物館・美術館の田名真之館長は今後、沖縄戦やそれ以前に海外に流出した文化財の状況について、調査研究事業を本格化させる考えを示す。

 県立博物館・美術館博物館班の外間一先班長によると、返還された釣り鐘はその大きさなどが、国頭村安波区公民館所蔵の釣り鐘に類似しているという。沖縄では戦前、首里の寺院のほか、各集落に鐘があり、さまざまな合図に使われていた。

 当時、鋳型は使い回しをされていたとみられ、はりにつるすための「龍頭(りゅうず)」と呼ばれる最上部や「撞座(つきざ)」という木づちを受ける部分を調べれば、ある程度年代が分かる可能性がある。あわせて、成分の青銅やスズの分析も進めるという。

 琉球処分(琉球併合)以降、沖縄から数多くの文化財が海外に流出した。田名館長によると、新型コロナの状況が落ち着いた後、米国を中心に、沖縄戦やそれ以前に持ち出された文化財を調べる事業を本格化させる。海外に残る沖縄の文化財については、10数年前に一度調査されたが、2年前から改めて調査を計画していた。“里帰り展”のような企画にも意欲を示す。

 2日の返還セレモニーで田名館長は「沖縄から出て行った文化財の調査研究をしながら、返還してもらえるものは返還してもらいたいし、海外で沖縄を広めるという役割もあるので、どうしていくかを考えていきたい」と強調した。