「首里琉染」創業者の染料、次代へ 京都の製作所に寄贈、体験の場を計画


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 【那覇】紅型・サンゴ染め工房「首里琉染」(那覇市)の創業者・山岡古都(こと)さん(1936~2005年)が残した草木染の染料がこのほど、京都市の藤木友禅型製作所に寄贈された。同製作所は染料を活用し、学生らが草木染を体験できる場を今秋につくろうと計画している。

藤木友禅型製作所の藤木道雄社長(左)に染料を寄贈した首里琉染の大城裕美代表(中央)と大城英明専務=京都市(首里琉染提供)

 山岡さんは京都を拠点に草木染などの研究者・染色作家として活躍していた。沖縄の染色文化の発展を目指し、1973年に染色研究所を那覇市首里山川町に設立したのが「首里琉染」の始まりだ。山岡さんの指導による植物染料の研究は紅型の質の向上に寄与したという。さらに文化財の収集、寄贈など染色作家の枠にとどまらない幅広い活動に取り組んだ。

 山岡さんは京都と沖縄を行き来し、京都の研究所には各地から集めた染料を保管していた。染料はインドアイやコチニール、タンガラなど20種類以上。ドラム缶などに保存され、量は4トントラック2台分に上った。

山岡古都さん(首里琉染提供)

 山岡さんの長女で首里琉染2代目の大城裕美代表は染料を沖縄に移すことも検討した。だが高額な輸送費や大量で使い切れないといった理由から断念した。活用できる所を探す中で、保管場所近くで営業する藤木友禅型製作所を知り、寄贈を決めた。

 藤木友禅型製作所は友禅型の製作所として創業し、現在はシルクスクリーンの型を製造する。藤木道雄社長は「まず学生や一般の方がシルクスクリーンプリントを体験できる工房を立ち上げ、次に草木染も体験できるようにしたい。染色を学ぶ大学にも案内を出す」と展望を語った。

 大城代表は「父が残した染料を次世代に活用してほしい。草木の大切さに触れ、技術の向上に役立ててもらえたら」と話した。

(伊佐尚記)