1950年に外務省がまとめた日米行政協定の草案は米軍の自由な移動を認めることが「日本にとって不利」と表現した。米軍駐留の影響によって「第三国」との軍事的な緊張関係を高める可能性を当時の日本政府が認識していたということが分かる。
中国が日本周辺で軍事訓練を含む行動を活発化させ、米国との対抗関係が深まっている今、当時の政府の懸念は現実味を帯びつつある。
米中双方が直接的な武力衝突を望んでいないとしても、何かの拍子で偶発的な軍事衝突が勃発し、戦争に発展する恐れがないとは言えない。そうなれば、犠牲になるのは米軍基地が集中する県民の生命や暮らしだ。
現在、日本政府は中国を念頭に沖縄の米軍を抑止力の要に位置付け、南西諸島で米軍と自衛隊の一体化を進めている。国民に対しては米国との同盟関係を強める利点だけを強調する一方、リスクは覆い隠している。
南西地域での日米の軍事・防衛力強化は周辺国との軍拡競争につながる可能性もはらむ。日米同盟の強化だけでなく、他国との緊張を高めないという思考が必要だ。
(明真南斗)