役と一体となった芝居 大城光子さんを悼む 金城美枝子・沖縄芸能連盟会長


社会
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名作歌劇「与那国ションガネー」でマイチを演じる大城光子(左)=2010年10月、うるま市民芸術劇場

 大城光子さんは、戦後に女性だけで構成された沖縄芝居の劇団・乙姫劇団で「四大スター」と呼ばれるほど、素晴らしい演劇をする方だった。

 「泊阿嘉」や「薬師堂」などの四大歌劇をはじめ、多くの作品で多様な役を演じた。沖縄芝居に登場する人物のような雰囲気が普段からあって、男役でも女役でも、作中の役と一体となった芝居で観客をうならせ、たくさんのファンがいた。

 沖縄芝居で描かれる、琉球王朝時代や、辻(チージ)のことなどかつての沖縄の歴史や文化に造詣が深かった。本で学んでも分からないことを知っていて、舞踊を創作するときに時代考証などでアドバイスをもらったこともある。乙姫劇団で磨いた卓越した感性の持ち主で、舞台構想も上手だった。また、自分の思ったことを出し惜しみせずに、はっきりと言葉にする人だった。芸に対して、良いところも悪いところも教えてくれ、勉強させていただいた。

 雑踊に、乙姫劇団出身者ならではの独特の雰囲気があり、参考にさせてもらった。一方、同じ玉城流だったので、琉球古典芸能コンクールのときに、姉(谷田嘉子)と私で、コンクールに出場する大城さんの弟子に、古典舞踊を稽古したこともあった。

 晩年は、舞台に立たれることがなかったのが残念だ。大城さんが培ってきた、内面から時代の風情がにじみ出る踊りを、弟子たちはしっかり学んでいることと思う。それでも、学び足りないところ、分からないところがあったら、私をはじめ、他の先生方に見たり聞いたりして、芸の確かな継承に努めてほしい。あらためて大城さんが亡くなったことが、惜しまれる。

 (沖縄芸能連盟会長、玉城流扇寿会家元、談)


 大城光子さんは13日に死去。88歳。