私は両親が県出身ながら東京で生まれた。復帰直後に沖縄に来て沖縄を撮りたいと動き出した頃、國吉和夫さんと出会った。こわもてだが心が優しく、いろんなアドバイスをくれた。
コザ騒動などを記録した写真集「STAND!」を見て分かる通り、和夫さんの写真は直裁的だ。ぱっと見てすぐに伝えたいことを感じ取ることができる。映像の強さと心に訴える強さが、写真に鋭く表れていた。また、沖縄を代表するさまざまなミュージシャンの写真も撮っていた。それらの写真は、どれも被写体に対する敬意が感じられる。
和夫さんの中には、うちなー(沖縄)の置かれた理不尽な状況に対する憤りと、うちなーの文化や人々に対する尊敬の念があった。それを人間的な目で捉えていた。和夫さんの写真そのものがうちなーだったとも言える。
体調が悪いとは聞いていたが、まさか、こんなに早く亡くなってしまうとは思っていなかった。今、感じているのは、仲間を失ったという悔しさだ。
昨今の情勢を見ると、沖縄の中にも国の政策に流されようとしている気配を感じる。和夫さんは理不尽な状況でも諦めず、抗(あらが)う気持ちを持ち、メッセージを発し続けたいと思っていた。その思いを後輩にも伝えていきたい。
(写真家、談)