prime

写真そのものが「うちなー」 國吉和夫さんを悼む 小橋川共男・写真家


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
50年前に自身が撮影したコザ騒動の写真を見ながら、当時の状況を説明する國吉和夫さん=2020年12月、那覇市泉崎の琉球新報社2階ギャラリー

私は両親が県出身ながら東京で生まれた。復帰直後に沖縄に来て沖縄を撮りたいと動き出した頃、國吉和夫さんと出会った。こわもてだが心が優しく、いろんなアドバイスをくれた。

コザ騒動などを記録した写真集「STAND!」を見て分かる通り、和夫さんの写真は直裁的だ。ぱっと見てすぐに伝えたいことを感じ取ることができる。映像の強さと心に訴える強さが、写真に鋭く表れていた。また、沖縄を代表するさまざまなミュージシャンの写真も撮っていた。それらの写真は、どれも被写体に対する敬意が感じられる。

和夫さんの中には、うちなー(沖縄)の置かれた理不尽な状況に対する憤りと、うちなーの文化や人々に対する尊敬の念があった。それを人間的な目で捉えていた。和夫さんの写真そのものがうちなーだったとも言える。

体調が悪いとは聞いていたが、まさか、こんなに早く亡くなってしまうとは思っていなかった。今、感じているのは、仲間を失ったという悔しさだ。

昨今の情勢を見ると、沖縄の中にも国の政策に流されようとしている気配を感じる。和夫さんは理不尽な状況でも諦めず、抗(あらが)う気持ちを持ち、メッセージを発し続けたいと思っていた。その思いを後輩にも伝えていきたい。
(写真家、談)