「海守れ」広がる抗議 辺野古 県敗訴確定 「反対しても」思い複雑


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 名護市辺野古の新基地建設で、大浦湾側の軟弱地盤の設計変更申請を巡る訴訟で県の敗訴が最高裁で確定したことを受け、5日、基地建設予定地の名護市大浦湾や那覇市で緊急集会が開かれるなど抗議の動きが広がった。辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議の集会には主催者発表で700人が集結。地方自治を否定するような判決への批判や知事の不承認を支える県民世論は高まっている。一方、政府による工事の強行や司法の判断に、諦めや複雑な思いを抱き「国が進めるものは市民や自治体が反対しても進んでしまう」と肩を落とす人も見られた。 (1面に関連)
 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡る訴訟で、最高裁が県の上告を棄却し県の敗訴が確定して一夜明けた5日も、基地が小さな島に集中する県民の日常があった。米軍機の飛ばない空を願う親子連れ、1日も早い移設を望む人―。憤り、諦め、無関心、落胆などさまざまな思いが聞かれた。
 普天間飛行場に近い公園で午後5時過ぎ、ウオーキングしていた森島明孝さん(85)=宜野湾市=は「今日はうるさくないね。いつもこうだといいのに」と空を見上げた。県敗訴に「辺野古移設は両手を挙げて喜ぶことはできないが、いつ事故があるかも分からない。1日でも早く基地が(市の)外に出て行ってほしいのが本音だ」と心境を語った。
 息子と遊ぶ女性(39)=同市、パート従業員=は「辺野古に基地が移っても(米軍機が)沖縄の空を飛ぶのは変わらない。最低でも県外に移してほしい」と話す。
 名護市東江でマリンレジャー店を営む渡具知透さん(64)は「国がやると言ったらやるというメンツを、国際社会に示したいのではないか。沖縄から見れば残念としか言えない」と肩を落とした。
 南風原町にある沖縄陸軍病院南風原壕の平和ガイド、大城逸子さん(64)は「敗訴は分かっていたこと。だけど沖縄の民意はどうなるの」と唇をかんだ。沖縄戦のさなかに建設が始まった米軍基地。その歴史を「知らなければだめだ」と訴えた。
 自衛隊配備強化が進む石垣や宮古島の住民からは不安の声も。石垣市南ぬ浜町の堤防で、釣りをしていたホテル業の喜多明男さん(39)は「釣り仲間もみんな辺野古埋め立てに怒っている。これからも反対の声を上げ続ける」と語気を強めた。自衛隊増強が進み「有事」という言葉を耳にすることが増えた。辺野古も含め軍備拡張は「逆に有事を招いてしまうのではないか」と懸念を示した。
 若い世代からは基地建設に無関心や賛成の声が聞かれた。専門学校生の男性(19)=名護市=は「周囲の人もそれほど興味がない。負けるだろうと思っていたし、(敗訴を)特に何も思わなかった」と淡々と語り、「辺野古に新基地が建設されることで中国の侵略から守ってくれるのではないか」と考える。
 大学でエイサーの準備をしていた宮城奈歩さん(19)=名桜大2年=は辺野古新基地建設は「はっきりと反対派ではない。バイト先によく米兵も来てくれる。交流を持てることはメリットだと思う」と話し、国と県が「しっかりと話し合って折り合いをつけてほしい」と望んだ。
 (中村万里子まとめ)