B型肝炎訴訟で国と和解が成立し給付金を受け取った男性(62)=沖縄市=に、同市が追加給付金受け取り前に男性に支給した生活保護費約116万円の返還請求を厚生労働省が認めずに、返還決定を取り消す裁決をしていたことが25日、分かった。同市は和解成立時点で男性にすでに「資力」が発生していたとして、男性に保護費返還を求めていた。
2013年8月、B型肝炎訴訟で男性は病症がない「無症候キャリア」として国と和解して給付金を受け取った。その後、生活が困窮して14年6月から生活保護費を受給したが、その間に症状が悪化し「慢性肝炎」と診断され、同年12月に国から追加給付金1250万円の支給が決定。それに伴い、生活保護が打ち切られた。
沖縄市は男性の「資力」発生日を訴訟で和解した13年8月と判断して、その後に支給した保護費約116万円の全額返還を15年3月に請求した。一方、男性側は無症候キャリアで和解した時点では慢性肝炎に病態が進展するかは不明であったため、資力発生日は追加支給の決定時点だとして県に審査請求したが、同7月に県は請求を棄却。男性側は厚労省に再審査請求していた。
厚労省は16年9月23日付で「資力の発生日を保護開始前の和解日としたことは誤り」として、沖縄市の決定を取り消す裁決をした。
代理人によるとB型肝炎訴訟において病態進展で受け取れる追加給付金を巡り、自治体が和解成立時点を資力発生日として、生活保護費の返還を求めたのは全国でも初めてのケースとみられる。男性は「自分と同じ境遇の人が苦しい思いをしなくて済むのが何よりだ」と話した。