知事選に安里氏出馬表明 佐喜真氏擁立に「待った」


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県知事選への出馬を表明する安里繁信氏(中央)と「新しい沖縄を創る会」代表幹事の安次富修氏(左)、新垣哲司氏=3日午後、那覇市松山

 11月18日投開票の知事選に向け、県政野党の自民が設置した候補者選考委員会(国場幸一委員長)の人選が最終局面を迎える中、候補者の一人でもある安里繁信氏(48)が選考委の決定を待たずに出馬表明に踏み切った。選考委は佐喜真淳宜野湾市長(53)を擁立する方針を固めており、候補者一本化に向けた交渉が不調に終われば、保守分裂は避けられない。

 ただ、自民県連内には安里氏の会見を「県政奪還後の副知事ポストの確約などに向けた条件闘争のためのパフォーマンス」との冷めた見方もある。一方で「安里氏を抑えない限り、佐喜真氏は出馬できない」との危機感もあり、佐喜真、安里両氏を中心にさまざまな思惑が交錯している。

 出馬への布石

 3日、那覇市内で行われた安里氏の会見には、宜野湾市長選で佐喜真陣営の選対本部長を務めた安次富修元衆院議員と元自民県連会長の新垣哲司氏が同席した。安次富氏は「苦渋の決断で表明に踏み切った」と理解を求めた。安里氏の事実上の支持母体となる「新しい沖縄を創る会」はこれまで選考委に対して、名前が挙がっている人物についての世論調査や討論会などを求めてきたが、実現していない。

 「創る会」は選考委への不満を背景に会見前日、自民県議や選考委員に対して文書で出馬表明を通知し、揺さぶりを掛けた。安里氏周辺は「我々は本気だということを示すため」と明かすが、自民側は通知に反応しなかった。

 安里陣営の動きをよそに、選考委は佐喜真氏擁立の方針を決めた。自民県連幹部によると、報道各社が「佐喜真氏有力」と報じたにもかかわらず、佐喜真氏から選考委などに対して報道を打ち消す行動はなかった。同幹部は「政治資金パティーでの『悩みに悩んで政治家は決断する』という佐喜真氏の発言もそうだが、我々は佐喜真氏は出馬に踏み切ると判断している。『出したい』候補者で唯一、意欲を示していたのが佐喜真氏だった」と擁立に至った経緯を解説する。

 地元の声

 ただ、宜野湾市の与党市議団や佐喜真氏後援会などからは「これだけ推されたら断れない」と知事選出馬を容認する声がある一方、任期途中での市長辞任に否定的な声も根強い。後援会幹部によると、佐喜真氏が初当選した時から支援者の間では「市長を3期は続けてほしい」との共通認識があったという。

 市長後継者が未定なことも周辺の動きを慎重にさせる要因だ。後援会関係者は「当然地元が優先。後継者が決まっていればまだいいが…」と保守市政の継続に不安をのぞかせる。安里氏の出馬表明に対しても、与党市議の一人は「一本化できていない中で手を挙げられるのか。誰かが調整に入らないと厳しい」と語る。

 後援会や与党市議団らは、選考委が佐喜真氏に出馬を正式に要請した後、具体的な対応を協議する。佐喜真氏が出馬に意欲を見せる中、出馬の環境が整うかが佐喜真氏の最終判断の鍵を握る。 (吉田健一、長嶺真輝)