「もう一度顔が見たくてたまりません」 沖縄戦の元学徒の遺書を修復


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劣化が進む中、修復された元学徒の遺書。両親やきょうだいへの思いをつづっている=17日、那覇市首里金城町の養秀同窓会館

 沖縄戦で鉄血勤皇隊・通信隊として動員された沖縄県立第一中学校の元学徒たちがつづった遺書の修復作業を進めている養秀同窓会(一中・首里高校同窓会)は17日、修復作業を終えた14人の遺書を報道機関に公開した。遺書には年端もいかぬ少年たちが与えられた軍命に向き合い、家族の身を案じ、国を守ろうとする思いが並ぶ。戦後74年を経て戦争の悲痛さを今に伝えている。

 ある遺書は米軍の沖縄本島上陸に「実に実に残念で憤慨に堪えない」と悔しさをにじませた上で、「家族は健在なりや 平安座の幸姉はどうなった。自分にとっては心配なのは唯一これ一つです」とつづった。

 さらに「御国のために大君のために散る覚悟」と書いた次の行では「もう一度父母兄弟の顔が見たくてたまりません」と無念さを吐露。しかし最後には「もう自分には思い残すことはありません」と締めくくっており、わずか数行に揺れ動く感情が表れている。そのほかの遺書でも、生還したら再び父母兄弟の顔が見られるだろうと期待感を持ちながら「決死敢闘悔いなし」と覚悟の言葉を残している。

 養秀同窓会によると県内21校の学徒隊のうち、一中学徒隊が唯一、学校として遺書を書かせたという。同会の田場稔会長は「学徒隊の遺書だからこそ多くの人の心を捉え、戦争とは何かを考えさせてくれる」と価値の大きさを説明し、修復の意義を強調した。