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平和の願い 蒔絵に 金沢の宮元さん 聖書の言葉つづる


平和の願い 蒔絵に 金沢の宮元さん 聖書の言葉つづる 宮元美千子さんが手がけた、ヘブライ語を取り入れた蒔絵パネル=12日、金沢市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続く中、金沢市の蒔絵(まきえ)師宮元美千子さん(65)がイスラエルの公用語ヘブライ語を使った作品を手がけている。額に入った蒔絵パネルに草花などの題材と共につづられているのは聖書の一節。クリスチャンである宮元さんは「祈りには救いがあると伝える言葉。平和への思いを込めた」と話す。
 「この世は神のいつくしみで満ちている」。漆黒の塗り板にカラフルな粉で装飾されたオリーブの実や麦、ブドウと共にキリスト教、ユダヤ教双方の聖典である旧約聖書「詩編」の言葉がヘブライ語で書かれている。紛争前の今年7月に手がけた作品だ。オリーブなどはイスラエルの代表的な農作物とされ、争いのない世界を象徴する豊作を表現した。
 宮元さんは、漆器や蒔絵パネルを制作する蒔絵師として活動している。過去に2回、巡礼でイスラエルを訪れた。初訪問時の1984年はキブツ(集団農場)で民泊し、現地の人と交流した。出稼ぎでパレスチナ人が来ていて「イスラエル人と家族ぐるみの付き合いをする人もいたのが印象的だった」と回想する。
 2016年の再訪時、旧約聖書の原語であるヘブライ語を取り入れた作品を着想。心に響いた聖書の箇所について、イスラエルに留学経験のある友人に読みを教えてもらい、原典を書き写した作品を作るようになった。
 22年には日本とイスラエルの国交樹立70周年を記念し、東京都内で個展を開催。23年は金沢で開こうと準備していたさなかに紛争が起きた。現地の友人から家族を失った人の話などを聞き「作品を通じ、平和のありがたみを伝えたい」との思いも込めて11月に個展を開いた。
 戦闘ではイスラエル、ハマスの双方で多数の犠牲者が出ている。宮元さんは「紛争に巻き込まれたみんなが被害者。平和を祈る作品を作り続けて、いつかイスラエルで個展を開きたい」と力を込めた。